研究実績の概要 |
本研究は固相成長法を用いてこれまで得るのが困難であった組成が均一で数センチサイズの(K0.5Na0.5)NbO3 (KNN)非鉛圧電単結晶を製造することを目的とする。そのために必要な種々の作製条件を明らかにする。本研究により、組成が均一で数cmサイズのKNN非鉛圧電単結晶の育成が可能となれば、結晶異方性の利用とドメイン構造制御により、環境負荷の高い鉛系圧電材料を代替することができ、この問題の解決に大きく寄与できる。 H30年度は主に(1)焼結温度、(2)焼結助剤の添加の仕方について調査を行った。焼結助剤にはCo3O4またはK4CuNb8O23 (KCN)を用い、種結晶には(100), (110)KTaO3 (KT)を用いた。焼結助剤を1wt%Co3O4、種結晶を(110)KT、焼結時間を24hとし、焼結温度を1020~1200Cと変化させて焼結したところ、1130C以上では種結晶からの単結晶の成長距離が急激に伸び、1140Cでは1.5 mmまで成長した。単結晶は種結晶の両面に成長しており、種結晶の厚みは0.5 mmなので種結晶垂直方向に長さ3.5 mmの単結晶を作製できた。しかし、得られた単結晶には多数の大きなポア(直径10~20um)が存在した。 そこで、ポアの数やサイズを減少させるため、種々の検討を行ったところ、形成体のKNN粉末に添加する焼結助剤を0wt%Co3O4、0.5wt%Co3O4、0.5mol%KCNとし、雰囲気調整粉に5wt%Co3O4を加えたKNN粉末を用いて1140C, 24hで焼結した場合、単結晶のポアの数やサイズを減らせることを見出した。この条件を用いて焼結時間を100hと長くして密でより成長した単結晶の作製を試みたが、単結晶の成長距離は1.5mmほどであまり変わらなかった。また、ポアのサイズが増大しており、作製条件の更なる最適化が必要である。
|