研究課題/領域番号 |
17K14820
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
伊藤 海太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 主任研究員 (30554381)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アコースティック・エミッション法 / Internet of Things / リモートセンシング / プロセスモニタリング |
研究実績の概要 |
材料加工をインプロセスにモニタリングできる非破壊評価法は非常に限定されるが、アコースティック・エミッション(AE)法は、センサの出力波形を事象発生の有無に関わらず連続的に記録すれば、含まれる有効信号とノイズの実測結果に基づいて適切な処理を行い、高ノイズ環境でも微小欠陥の発生を検出できるようになるため、有効である。しかし、既存の波形を連続計測できるAE計測装置は有線式であるため、密閉部や回転部などの、産業応用上重要な対象物を直接計測ができなかった。そこで、本研究では、AE波形の連続計測が可能な無線式の装置を開発し、難計測環境での使用を実証することを目的としている。 平成30年度には、前年度に開発した無線式の計測装置(センサノード)の改良と、難計測環境への応用を行った。装置改良については、①従来より小振幅の信号を検出するための専用の簡易アンプの作製、②センサノードの制御ソフトウェア改良による、波形解析の高安定化と低遅延化、③複数ノード間のマイクロ秒精度の同期を無線で行う手法の開発(AEセンサに電圧を印加して発振した疑似AE波を他ノードで検出し、発振時刻と検出時刻を突き合わせる処理を相互に行う方法)を行った。一方、難計測環境への応用では、①前年度に引き続き、高ノイズ環境の例として摩擦攪拌接合 (FSW) のモニタリング、②新たに密閉環境の例として3Dプリンタ内での計測トライを行った。いずれの計測環境においても、従来の有線計測装置よりも簡便な設定で高感度のAEインプロセスモニタリングが行えており、本研究の効果を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は「圧電素子を発振器して利用するセンサノード間の同期・感度チェック機能の追加」に着手するとしていた。前述の「研究実績の概要」にあるとおり、開発に用いたセンサノードのDA(デジタル→アナログ)変換機能を利用して、AEセンサに電圧を印加して十分な振幅の波形を発振し、この疑似AE波を数十cm離れた別のノードで検出することができた。ただし、センサノードに利用しているIoT用ボードの仕様により、高速AD(アナログ→デジタル)変換を利用するAE計測と、DA変換を利用する発振は同時には行えないこと、切り替えも短時間では行えないことが明らかとなった。しかし、これは発振部分を別の簡易ボードで行うなどの回避策をいくつか用意できている。 難計測環境についても、密閉環境内に置いた無線センサノードでAEを計測し、これを装置外部にWi-Fiの5 GHz帯の電波で十分な帯域を確保しつつ送信することができた。 このように、平成30年度に予定していた項目は概ね達成しており、また平成31年度に研究を完了させるために必要な検討項目についても明らかになっているため、現在のところ順調な研究進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
複数のセンサノード間を正確に同期させる機能が、採用したIoTボードのハードウェア仕様のため、当初想定した通りの実装では機能しないことが明らかになったが、発振機能を分離することで対応が可能である。これは当初想定よりも部品は増えるが、各部分の動作は単純になるため、動作の確実性も高いと予想され、当初計画書の記載通りの装置を完成させられる見通しである。 このような方法で、複数センサ間の同期および感度チェック機能を完成させ、自律的なネットワークをセンサノード(子機)とステーション(親機)の間で構築する。また、高ノイズ環境・密閉環境・回転環境を例題として、開発した装置および手法の実用性を実証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に本研究で開発中の装置に搭載予定であった複数ノード間の同期機能が、当初想定していた方法では実装できないことが年度中に明らかになったため、問題解決に時間を要し、また予定していたソフトウェア開発外注を一部延期したため。 上記の問題の解決(回避)方法は平成30年度中に目処が付いたため、延期していたソフトウェア外注は内容を変更して令和元年度に実行予定である。
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