本研究では,自動車などに用いる耐衝撃性に優れた異材接合部の実現に向けて,衝撃変形時の慣性や衝撃破壊に対して異材接合ゆえの力学的不均一性がもたらす影響を十分に理解することを目的として,弾性定数は同じであるが強度差のある軟鋼と高強度鋼をクラッド接合した継手を用い,異種鋼板接合部の衝撃時のひずみ分布と温度分布の可視化及び破壊特性の調査に取り組んだ。接合部が衝撃負荷で破壊するまでの過程を詳細に把握するため,高速カメラや高速サーモグラフィを用いて接合部の変形や温度場を連続して撮影した。 H29年度に着手した取り組みでは,異種鋼板クラッド接合継手を用いて動的3点曲げ試験を実施し,サーモグラフィによる温度場の高速撮影で接合部の高速変形時の温度上昇をとらえ,その可視化に成功した。これに対し,塑性仕事による発熱と高速変形中の熱伝導を考慮した動的数値解析モデルによる計算を実施し,この解析で求めた異種鋼板クラッド接合部の温度場をサーモグラフィで計測した結果比較して,計算に用いたモデルの妥当性を確認した。この成果はH30年度に学術論文として掲載された。 さらに,その成果をふまえて,異種鋼板継手の動的数値解析モデルを破壊評価に適用した。継手の破壊靭性をシャルピー吸収エネルギーからワイブル応力を媒体として評価する手法を構築し,その有効性を異種鋼板クラッド継手を用いた実験で検証した。このモデルを用いて吸収エネルギーに及ぼす強度ミスマッチの影響を指標化し,パラメトリックな解析で影響度を調べて強度比の関数で与えられることを実証した。
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