研究課題/領域番号 |
17K14823
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野田 祐樹 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (30784748)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 印刷形成 / 生体材料 / ハイブリッド / インピーダンス / 生体信号 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、材料の階層的な「高次構造」を印刷法で作製するための構築原理を開拓し、これをセンサ材料およびセンサ周辺材料の作製技術としてウェアラブル生体信号計測デバイスに統合することである。具体的にはセンサ材料として生体電位計測用の高い粘着性と優れたインピーダンス特性を両立した「導電性粘着剤」、センサ周辺材料としてセンサを伸縮による歪から保護するためヤング率が連続的に変化する「硬軟パターン」の2つの高次構造を印刷と合成を掛け合わせた新手法でその場形成する。 本年度は導電性粘着剤の材料開発と印刷を行った。具体的にはα-グルコースからなる高分子材料を粘着剤の母体とし、これにドーパミン誘導体を導入することで高い粘着性と優れたインピーダンス特性を有する導電性粘着剤を作製に成功した。引張試験機によるタック試験により、絆創膏と同様の優れた粘着力を示した。またLCRメータにより、筋電から脳波計測に求められる0.1Hzから10kHzの帯域でフラットなインピーダンスを有することを明らかにした。さらに、これらの導電性材料はスクリーン印刷法により印刷可能であり、特性の異なる粘着剤を階層的に形成することで市販ペースト材料と同等の脳波が計測可能であることを医学部との協力の元で実証した。 開発した導電性材料は、生体適合性の高い材料のみから構成されており、印刷技術でシート上に形成可能であることから、取り扱いに手間がかかるペースト系やジェル系の生体信号計測用材料を代替できる可能性を強く示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果は計画していた3つの研究フェーズの内、センサ材料に関する1と3を進めたものである。当初、実用性と印刷適合性を兼ね備えた物性を有する材料の選定および開発に多くの時間を費やしたが、結果的に生体信号の一つである脳波を計測可能な導電性粘着剤の開発と印刷形成に成功した。さらに信号のS/Nに関する特性を回路デザインだけでなく、材料から改善できる可能性を示唆する結果を得ることができた。これは新しい現象として学術への貢献が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度で得られたS/Nに関する現象について、物性の観点からより深く追求していく。また、計画していた3つの研究フェーズの内、センサ周辺材料の開発に関する研究フェーズ2については、材料の選定に留まっているため、今後印刷技術を含め開発を加速する。これにより新規物性とこれまでにない印刷形成技術を開拓し、実用性の高いウェアラブルな生体信号計測デバイスへの統合を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の物品の中で最も高額だったソースメジャーユニットを始め、計画した見積もりより実際の購入金額が安く抑えられたため差が生まれた。次年度では計画に加え、ガラス製合成器具など高額にも関わらず壊れやすい消耗品の購入を進め研究を加速する。
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