研究課題/領域番号 |
17K14824
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
張 昊 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (10773658)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 接合 / 銀ヒロック / 銀直接接合 / 銀ナノ火山 |
研究実績の概要 |
銀ヒロックの成長量および体積と温度、時間など制御要素の間の定量的な関係を見つけ出した。積み重ねた実験データの整理および分析を通して、銀ヒロックの成長を精密に制御する方法を構築すると共に応用への探索を始めた。 その場TEM、STEM、環境TEM(ETEM)、環境SEM(ESEM)など材料微細構造を評価できる技術を総合的に利用し、銀ナノ火山という現象の発生メカニズムの解明、仮説の検証を行いました。例えば、その場TEM観察によって、銀ヒロックおよび基板銀膜の微視組織が異なる成長段階での変化を明確にでき、Ag-AgO-Agという相転移の全過程も観察できた。その上、ヒロックの生成位置、結晶方位および銀柱状晶との方位関係などのパラメータをシステマティックに得られた。同時に、ETEMまたはESEMなどの環境制御顕微鏡での観察によって、作動環境下での銀膜材料の構造や挙動の理解を深化できると共に、銀ナノ火山の理論の実証ができた。 銀直接接合技術の実用化の推進として、DBC基板を用いて、SiC-DBC接合部を作製し、接合質量を評価し、接合安定性を検証した。その結果、250℃、1.0MPa(治具)、60分の条件で、110MPa以上の超高強度接合を得、最低値も106MPaである。300℃、1.0MPa(治具)、60分の条件で、47MPaの平均接合強度が測定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀ペーストと銀膜接合など一連の銀焼結材料の焼結特性に関するマイクロ、ナノスケールでの評価と観察を行い、銀焼結材料が低温で焼結可能な理由が明らかになった。特に、銀膜接合技術の鍵となる銀ヒロックの成長に関連するメカニズムの研究は、当該分野の金属ヒロックに対するこれまでの認識を覆す画期的なものである。一般的に電子部品の金属薄膜におけるヒロックの発生は、ショートなどの故障のリスクを抑えるために、避けるべきものであると考えられてきた。しかし、我々の研究成果により、適切な条件において大量の銀ヒロックを発生させることでこれまでにない接合を構成できることが判明した。この接合技術は接合界面の複雑な構造を大幅に簡素化し、低温度無加圧の条件においても非常に高い品質の高耐熱純銀接合が得られた。 この結果に基づき、接合メカニズムの解明とその応用の両面で研究を進めた。接合メカニズムの面においては、TEMその場観察を通して銀ナノ火山の直接観察を試みた。また、現在まだ解決できていない課題(例えば、ヒロック形成の結晶方位や基材となる銀柱状晶の方位関係)についても、TEMを使ったナノサイズの微細組織観察によって解明できると考えている。 応用の面においては、、DBC基板を用いて、SiC-DBC接合部を作製し、接合質量を評価し、接合安定性を検証した。その結果、250℃、1.0MPa(治具)、60分の条件で、110MPa以上の超高強度接合を得、最低値も106MPaであった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進としては、次の方面で革新的な探索に着手した。まず、スパッタ/電気めっき銀膜表面のナノ結晶化改質プロセスの確立と最適化を行う。次に、表面ナノ結晶化によって改質された様々な基材上で銀膜直接接合実験を実施する。さらに、信頼性評価基準を確立するために、形成された接合体の信頼性評価を行う。最後に、ナノ結晶化改質した銀膜において、ナノレベルでの銀ヒロック異常成長のメカニズムを調査し、このメカニズムを他の金属材料に適用する可能性を探る。上記の研究内容は、申請者が実施できる独創的な研究であり、学術分野において先進性を有している。 パワーエレクトロニクスに代表される高温実装分野における表面ナノ結晶化処理の応用は、銀膜直接接合技術に限定されない。焼結やはんだ接合、溶接等様々な接合技術において、金属表面のナノ化改質による表面活性化は、接合の反応条件を大幅に改善する可能性がある。例えば、銀ペースト焼結接合においても、ナノ化改質された組織を導入することで、より簡易な条件下で理想的な焼結構造を得ると予想される。さらに、銅ペースト焼結接合においても、同様の効果が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に購入予定の酸素雰囲気制御炉は、他の既存する装置を改装し、流用できる為、とりあえず購入しないと判断した。残額は、今年度に他の解析及び試作装置を導入する際に、利用する。
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