研究課題/領域番号 |
17K14825
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
井戸田 直和 法政大学, 生命科学部, 講師 (60451796)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 温度応答性ポリマー / pH分解性ハイドロゲル / 表面開始原子移動ラジカル重合 / 層状ニオブ酸塩 / エッヂ表面修飾 / 層間表面修飾 / ナノシート |
研究実績の概要 |
今年度は、位置選択的に表面修飾した2層構造ナノシートの合成を目指し、層状ニオブ酸塩(NbO)ナノシートのエッヂ表面へのホスホン酸修飾、および反応性の高い層間Ⅰ表面への刺激応答性ハイドロゲル修飾を検討した。NbOとフェニルホスホン酸(PPA)を反応させた修飾体(PPA_NbO)について、XRDパターンではNbOと同様の回折線が観測された一方、 IR分析やNMR分析からPPA修飾が確認された。このことから、NbOの層間に影響を与えずに最表面のみにPAAが修飾されたと考えられる。このPPA_NbOをテトラブチルアンモニウムヒドロキシ(TBAOH)水溶液に加え、積層構造を剥離することでエッヂ表面のみにPPAを修飾したNbOナノシートが作製できた。またPPA_NbOの層間Ⅰに重合開始基を有するホスホン酸を修飾した後、酸分解性架橋剤(BDTM)とN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)を用いた表面開始原子移動ラジカル重合により、温度およびpH応答性を有するハイドロゲルを層間Ⅰに修飾した(PNB_NbO)。IR分析やNMR分析からNIPAAmとBDTMの存在が確認され、XRDパターンでの規則的な層間距離を示す回折線が消失した一方でSEM像では板状結晶が観測されたことから、積層構造を維持しつつ層間で重合が進行したと考えられる。このPBN_NbOをTBAOH水溶液に加え、層間Ⅱを剥離することでPBN_NbOナノシートを得た。PBN_NbOナノシートは、酸性条件ではAFM像におけるシート厚みが半減しており、pH変化に伴うBDTMの分解により2層構造から単層構造へと変化したことが示唆された。またPBN_NbOナノシート分散水溶液は、昇温に伴う濁度変化が確認され、温度応答性を持つことが示された。以上の結果から、目的の刺激応答性2層構造ナノシートの合成に成功したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、層状ニオブ酸塩のエッヂ表面と層間Ⅰ表面への位置選択的な修飾による刺激応答性2層構造ナノシートの合成を目標とし、酸性条件で2層構造から単層構造へと変化する温度応答性ナノシートを得ることができた。最終的な薬物キャリアの作製は、今年度のナノシート作製法を元に、反応性の低い層間Ⅱ表面への生体適合性ポリマー修飾を追加することで可能となると計画しており、順調に作製における要素技術の確立を達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討したPNB_NbOを用い、層間Ⅱ表面へ生体適合性ポリマーを修飾した後に、層間Ⅱから積層構造を剥離することで生体適合性を付与した刺激応答性2層構造ナノシートを作製する。このナノシートのハイドロゲル領域に薬物や蛍光試薬を担持させ、機能性薬物キャリアとしての利用を試みる。その際の薬物放出制御および生体適合性の評価として、培養細胞へのナノシート添加後の細胞生死判定や蛍光顕微鏡による観察からナノシートや薬物の細胞内分布を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、材料開発に重点を置くことになり、当初計画していた培養細胞を用いた材料の生体適合性の評価を行っていないため当該助成金に未使用額が生じた。次年度は、培養細胞を用いた生体適合性の評価に加え、翌年度に計画している薬物放出制御の評価と合わせて実施する予定であり、未使用額も合わせた使用計画としている。
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