研究実績の概要 |
本研究はODS鋼中の酸化物粒子照射下安定性を「1. 酸化物固有の照射下安定性」「2. ODS鋼中酸化物粒子の耐オストワルド成長特性」に分けて評価をするものであり、H29年度はそれぞれの項目について以下の通り遂行した。 1.酸化物固有の照射下安定性評価 酸化物が照射されると、元々の格子位置から原子が弾き出されることでアンチサイト欠陥を形成する確率が高まる。このことを踏まえ、Y2Ti2O7を対象としてYとTiの位置を交換させた場合の交換エネルギーを第一原理計算によって求めた。格子定数固定・格子定数緩和のそれぞれの条件において計算をを行った。計算手法の違いによって1%程度の誤差が生じることを考えると、格子定数固定・緩和の両条件において交換エネルギーはほぼ同程度であった。 2.ODS鋼中酸化物粒子の耐オストワルド成長特性評価 フルフェライト系のFe-12Cr-0.5Y2O3(単位はwt.%)を基本組成とし、マトリクス中にY-Ti, Y-Al, Y-Zr複合酸化物をそれぞれ意図的に析出させるため、0.21Ti, 0.5Al, 0.3Zr(単位はwt.%)をそれぞれ添加した合金を作製した。Ti, Zr添加材についてはそれぞれY2Ti2O7およびY4Zr3O12がそれぞれ析出するように、Fe2O3を用いて酸素濃度を調整した。Al添加材は単一の複合酸化物を形成させることが難しかったため、YAlO3とAl2O3の2種類のみが形成するAl, O濃度を選択した。基本組成の材料に対してTi添加材の酸化物粒子サイズが大きくなった。焼結温度が高かったため、Y2Ti2O7ではなくY2TiO5が形成した可能性が考えられる。
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