研究課題/領域番号 |
17K14835
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
野崎 安衣 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (60795516)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アモルファス合金 / 多孔質金属酸化物 / 水素生成反応 |
研究実績の概要 |
当該研究ではアモルファス合金を出発原料として新規金属酸化物を調製し,触媒担体として利用することで触媒の性能を飛躍的に向上させることを目的とし,本年度はCe-Alアモルファス合金を作製し,NaOH水溶液に浸漬させることで選択的にAlを溶出し,得られた多孔質CeO2の触媒担体としての構造や特性について検討した.前駆体の原子配列が多孔質CeO2の構造と担体特性に及ぼす影響を明らかにするため,Ce-Al結晶合金から調製した多孔質CeO2についても同様の検討を行った.なお,触媒担体特性は,次に挙げる2通りの担持金属・触媒反応で評価した.①Ru担持,アンモニアボランからの水素生成反応,②Au担持,ギ酸からの水素生成反応. 前駆体としてアモルファス合金を用いて調製した多孔質CeO2 は,前駆体が結晶合金の多孔質CeO2に比べ,高表面積で細孔径が小さいことから微細な構造を有していることが分かった.さらにEXAFSスペクトルより,アモルファス合金から調製した多孔質CeO2にはより多くの配位不飽和なサイトが存在することが示唆された. 上述した2通りの担持金属,触媒反応を用い触媒担体特性を評価したところ,どちらにおいてもアモルファス合金から調製した多孔質CeO2を担体として用いた方が優れた触媒特性を示すことが分かった.①においてはアモルファス合金から調製した多孔質CeO2の微細な細孔径,②においては,配位不飽和なサイトや高表面積が活性向上の一因であることが示唆された.さらに,アモルファス合金から調製した多孔質CeO2は高性能な触媒学会参照試料(JRC-CEO2)を凌駕する触媒担体特性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請研究ではアモルファス合金を出発原料として新規金属酸化物を調製し,その構造が担持される金属の構造やサイズ・触媒特性に与える影響について検討を行なっている. 当該年度は特に,Ce-Alアモルファス合金から調製した多孔質CeO2触媒担体について前駆体合金の構造が触媒特性に与える影響を調査した.高輝度光科学研究センター(SPring-8)での放射光XAFSを利用し,カーブフィッティング法により配位数・原子間距離などを算出することでCeO2の配位状態を解析し,XPS測定やSEM観察などの手法も組み合わせることで,結晶合金を前駆体とするよりもアモルファス合金を前駆体とした多孔質CeO2の方には配位数の低い原子が多く微細な構造を有しており,前駆体合金の構造としてはアモルファス合金が適していることが分かった. さらに,調製した多孔質CeO2触媒担体にRuやAuを担持し高水素含有化合物(アンモニアボラン・ギ酸)からの水素生成反応に応用した.どちらの担持金属においてもアモルファス合金から調製した多孔質CeO2を用いた方が担持される金属も微細化し,優れた触媒特性を示したことから,前駆体構造が触媒活性に強く影響を与えることを見出した.また,触媒学会参照試料(JRC-CEO1,JRC-CEO2)と比較してもアモルファス合金を前駆体とした多孔質CeO2の方が優れた触媒特性を示すことが分かった. これらの結果をもとに,論文投稿や国内外学会での発表を行なうなど,多くの研究成果を出している.これらの研究成果をフィードバックし,より詳細な構造解析を行うことで当該研究の更なる進展が見込まれる.
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究では,アモルファス合金を出発原料として調製した新規金属酸化物担体の構造状態と触媒活性の関連について解明することを目的としている.今後は,①高活性化に向けた構成元素・熱処理・化学処理条件の検討,②構造状態解析,③他のエネルギーキャリアからの水素生成反応への応用の3点を主たる研究対象とする. ①これまでの研究においてアモルファス合金から調製した多孔質金属酸化物は結晶合金から調製した試料よりも非常に微細な構造を有すことを見出している.今後は構成元素組成や化学処理条件について検討することで,更なる微細構造化や触媒活性の向上を試みる.また,アモルファス合金の結晶化過程は非常に複雑であることから,結晶化過程における構造変化を利用しアモルファス合金触媒の表面構造の改善も試みる. ②本研究で得られた金属酸化物は従来調製されているものとは異なり結晶性が低い.その構造が酸素吸脱着挙動や担持される金属の構造やサイズに与える影響について明らかにするため,また,アモルファス合金の構造状態と触媒特性の関連について解明するため,高エネルギー加速器研究機構(KEK-PF) ,高輝度光科学研究センター(SPring-8)での放射光in-situ XAFSを利用し,アモルファス合金の結晶化過程における構造解析や触媒反応中における金属酸化物の電子・構造状態を詳細に追跡する.結晶化過程にあるアモルファス合金の状態解析や,カーブフィッティング法を利用した配位数・原子間距離などの比較を行う.XPS測定やSEM観察などの手法も組み合わせることで,アモルファス合金への熱処理が触媒活性に与える影響について明確にすることを目指す. ③作製した多孔質金属酸化物を用い,他の高水素含有化合物からの水素生成反応に応用する.①で述べた構成元素や化学処理条件を検討することで高選択性・高活性な触媒開発を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度において、調製した試料を用い水素生成反応を開始したところ、当初の想定に反し、研究対象の多孔質CeO2の調製が難しく、残存金属が触媒特性を低下させてしまうことが分かった。研究遂行上、この問題の解決が必要なため、研究対象の多孔質CeO2の最適調製条件を検討する必要が生じた。このため、水素生成反応における生成ガス分析を実施することができず、生成ガス分析のための経費に未使用額が生じた。 平成30年度にはガスクロマトグラフを購入を計画している。
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