当該年度は純マグネシウムに対し、ECAP加工を行い、その加工パス回数、加工後の熱処理が材料組織と耐食性に及ぼす影響を評価した。すなわち、受入れ材をそのままECAP加工したAs-ECAP材、ECAP加工後に熱処理した、ECAP-HT材の2種類の試験片を準備し、組織観察、耐食性の評価に供した。 純マグネシウムは、1パスのECAPを行うと塩水浸漬試験における腐食速度が1/5ほどに大きく減少、すなわち耐食性が大きく向上した。しかしながら、加工パス回数を増やすと、腐食速度が増加し、耐食性は低下した。また、ECAP後に熱処理を行うと、腐食速度が増加し、耐食性が低下した。交流インピーダンスを測定すると、As-ECAP材において、電荷移動抵抗を示すナイキストプロットの半円の半径が1パスのECAP加工により大きく増加することがわかった。しかし、2パス材では、塩水浸漬直後は、1パス材と大差ない電荷移動抵抗を示すものの、塩水浸漬の時間が長くなると、急激に電荷移動抵抗が減少する傾向を示した。このことから、ECAP加工により純マグネシウムの電荷移動抵抗は増加するものの、加工度が上がると、時間経過により耐食性が低下する傾向があることがわかった。 組織観察の結果、1パスのECAPを行うと、結晶粒が微細化することが確認できた。ただし、1パス材と2パス材の粒径はほぼ同じであった。すなわち、純マグネシウムの1パスECAP加工による耐食性の向上は、粒径微細化によるものであると考えられる。2パス材では、1パス材と結晶粒径がほぼ変わらないため、加工による転位などの格子欠陥の上昇により、耐食性が低下したことが示唆された。また、ECAP-HT材は、すべてAs-ECAP材よりも粒径が粗大化していた。よって、純マグネシウムにおいては、結晶粒径が、耐食性に大きく影響していることがわかった。
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