Polyacrylamideとpoly(2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid sodium salt)で構成されるDouble-Network polymers(多孔質高分子試料)は3段階の階層構造をもつ特異的な構造を有している。これに起因して特異的な機械強度物性を示す。5wt%程度の水を含む試料は、絶乾試料よりも弾性率、最大破断応力ともに大となり、負のポアソン比を示す。ソフトマターの重要な特徴の1つは、水の存在によって物性が大きく影響することであるが、本試料は階層構造と水の機械強度への相関を解明するのに適したモデル物質である。 幅広い温湿度雰囲気下におけるマクロ粘弾性物性評価により、温度上昇にともに、このDN-polymersのゲル化に必要な含水量が増加することが明らかになった。また、室温におけるin-situ準弾性中性子散乱測定により、第1の階層である約10nm以下の網目構造を形成する高分子鎖のダイナミクスは水蒸気の増加に大して変化しない一方で、水のダイナミクスは水の量に対し大きく変化した。湿度30%付近では、水分子同士が水素結合などにより固定化していることが判った。導入した水の約9割以上は長い緩和時間を持った吸着水が系内にあるが、湿度30%よりも高い、あるいは低い湿度では、1割程度は動くがその運動様式は同じではない。低湿度下では、局所的に振動回転などをしているが、高湿度化では、水分子がジャンプ拡散運動しているなど水の運動様式の詳細が判った。 粘弾性測定と中性子散乱測定で得られた実験結果をもとに、DN-polymersの物性解明を行うことにより、DN-polymersの第1の階層がこのDN-polymersの物性に重要な階層構造であり、この構造は、温湿度に対して応答して、特異的なマクロ物性を引き起こすことが明らかとなった。
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