研究課題/領域番号 |
17K14847
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
後藤 育壮 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (10632812)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鋳鉄 / 熱処理 / 寸法 / 黒鉛 / 脱炭 / 酸化 / アルミニウム / 密度 |
研究実績の概要 |
鋳鉄が熱サイクルに伴い膨張する現象は成長と呼ばれ,寸法変化や強度低下が問題となる.この成長の原因には,黒鉛の固溶・再析出時の不可逆移動に伴う空隙形成などがある.これを利用して,空隙に油を含浸させた含油軸受も広く使用されている.本研究では,このような鉄基マイクロポーラス材料の迅速作製を目指し,今年度はまず,成長挙動に対する影響因子について検討した.マルテンサイト相を含む過飽和状態の片状黒鉛鋳鉄を熱サイクルの起点として用いたところ,加熱中の黒鉛化膨張に伴う寸法増加が観察された.一方,サイズの小さい試料では,マルテンサイト相の有無に関わらず,表面近傍の酸化が著しいほど寸法増加が大きい傾向も見られた. そこで,片状黒鉛鋳鉄の成長挙動における寸法効果及び酸化の影響について検討した.その結果,熱サイクルに伴う密度減少が見られたが,サイズの小さい試料ほどその減少量が小さい様子も見られた.このことから,サイズの小さい試料ほど熱サイクル中の酸化や脱炭の寄与度が大きく,それに伴い黒鉛の不可逆移動量が減少したことが推測される.また,Al添加時の寸法増加率は,無添加時に比べ大きい傾向が見られた.一方,熱サイクル時に固溶・再析出する黒鉛量はAl添加量に応じて多少増加する傾向にあるが,熱サイクル後の密度は0~0.7%AlではAl添加量が多いほど小さく,0.7~2%Alではほぼ同程度であった.熱サイクル後の元素マッピングでは,Al添加時には,熱サイクル中の内部酸化に伴いAl2O3が生成している様子が観察され,Al添加量が多いほどAl2O3生成量が多い傾向も見られた.したがって,特に1.5~2%Alでは,黒鉛の不可逆移動に伴う密度減少がAl2O3の生成により抑制されていたことが推測される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,成長挙動に対する黒鉛不可逆移動や内外の酸化の寄与度を比較評価することができた.また,密度測定を通じて,成長挙動とポーラス化の関連性についても検討することができた.
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今後の研究の推進方策 |
成長に伴う寸法増加が大きい鋳鉄が必ずしも鉄基マイクロポーラス材料に適しているとは限らないことを踏まえ,組成及び添加元素の最適化による安定的なポーラス化の実現策を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
有効に使用するには金額が小さかったため,次年度に繰り越すこととした. 次年度の助成金額と合算することで有効に使用する.
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