研究課題/領域番号 |
17K14851
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高橋 智輝 神戸大学, 工学研究科, 特命助教 (80535518)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オスモティックヒートエンジン / 浸透圧発電 / 正浸透法 / 温度相転移材料 / 駆動溶液 / 低品位排熱 |
研究実績の概要 |
1.LCST型相転移材料/水二成分系の溶液物性評価 各温度において液液相分離させたポリプロピレングリコール水溶液について、カールフィッシャー水分計を用いた平衡組成分析および曇り点測定を行うことにより相図の作成を行った。また、各濃度の水溶液について、蒸気圧降下法による浸透圧測定、DSCによる比熱測定、密度測定、粘度測定を行い、透水モデルの評価に用いる水溶液物性を取得した。 2.内部・外部濃度分極を考慮したPRO透水モデルの構築および評価手法の確立 各濃度に調製したモデル溶質であるポリエチレングリコール(PEG)水溶液を駆動溶液(DS)および供給液(FS)として市販FO膜に供給し、常圧および加圧下における水透過流束を実測した。一方、FO膜における内部および外部濃度分極を考慮したFO透水モデルをPRO用に修正し、実験値と推算値の比較を行うとともに妥当性を評価することにより、DS、FSともに同一の溶質を含む系における透水挙動の評価手法を確立した。 3.OHEシステムにおける発電性能の試算と高性能化に向けた課題抽出 項目1および2で得られた成果に基づき、PPG水溶液を作用媒体に用いたOHEシステムにおける発電性能の試算を行った。また、利用する排熱温度、DSの相分離性能や浸透圧性能だけでなく、解析モデルに導入するFO膜特性パラメーターなど、発電性能(出力密度W/m2)に関わる各構成要素の感度解析を行い、目標値を達成するための要求性能(課題)を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度相転移材料を作用媒体に用いたOHEシステムについて、おおむね順調に進展しており、ほぼ当初の計画通りの結果を得たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
4.量子化学計算に基づく低分子化合物/水二成分系の熱力学物性推算と最適DSの選定 初年度に明らかにされた要求性能を満足するDSの創出を行う。具体的には、量子化学計算手法であるCOSMO-RS法を用いた低分子化合物/水二成分系の熱力学物性推算を行い、液-液相平衡の推算から相図の予測を、また気-液-液相平衡における蒸気圧の推算から浸透圧の予測を行う。既知のLCST型相転移材料を中心とする100以上の化合物に対して、分子構造と相分離特性および浸透圧特性の関係を体系的に調査する。良好な性能が見込まれる化合物については項目1と3を実施し、再度、発電性能の評価を行う。 5.最適DSを用いたOHEの原理検証とプロセス設計 項目1~4で最適化されたDSについて、分離性と透水性を含めたOHEシステムの原理検証を行う。具体的には、DSの再生(分相)速度を実験的に取得し、再生装置と透水装置のスケールを決定する。さらに、53~120℃の低品位排熱および地熱利用を対象とする条件にてフィージビリティスタディを行い、OHE全体のプロセス設計を行う。これらによりに、OHEの発電ポテンシャルを理論的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は既存の装置を用いて検討を行い、また予定通りに比較的スムーズに研究が進行したため、次年度に資金を繰り越せる結果となった。次年度はこの助成金を加えて、OHEの原理検証用の装置を作成し、フィージビリティスタディを通じてOHE全体のプロセス設計を行う予定である。 研究費の使用内訳としては、主に少額備品および消耗品(化学薬品、ガラス器具、配管部品)に使用予定であるが、一部は成果発表のための旅費に使用予定である。
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