研究実績の概要 |
本年度はフッ化物フリー条件下におけるAlPO4-34結晶および膜の生成範囲の評価を行い、結晶の形成機構の解明に注力した。結晶の合成では、合成ゲルの組成をxAl2O3 : yP2O5 : zSDA : 100H2Oと、合成ゲル中に含まれるAl, P, SDAの割合を様々に変化させ、AlPO4-34結晶の生成範囲を調べた。その結果、Alの割合には大きな影響が見られなかったが、PおよびSDAの割合を変化させることによりCHAのほかにAFI, AEI, APC型の構造を有する結晶が得られた。それぞれの合成ゲルのpHを調べたところ、比較的に酸性条件下にてAFIが混晶、また中性からアルカリに近づくにつれ、AEI、APCが混晶することが分かった。膜合成の場合についても同様の合成ゲル組成にてAlPO4-34の生成範囲を評価したが、比較的に酸性条件下においてAFIが混晶することは同じであったが、結晶合成の場合に純粋なCHA型の結晶が得られた一部の合成ゲル組成において膜合成の場合はAENの混晶が見られた。本研究では、種結晶を用いた水熱合成法にて膜を合成しているが、種結晶がそのまま成長すると仮定すると結晶合成の場合と比較して膜合成では生成範囲が広くなるのではないかと予測していたが、予測とは異なる結果であった。これらの結果より、本研究において膜の形成は種結晶がそのまま成長する機構ではなく、一部の種結晶が合成ゲル中に溶解し、特異的なCBU(Composite Building Unit)を形成することにより、形成する結晶構造が異なるのではないかと考えられる。また結晶および膜合成におけるAlPO4-34の生成範囲を評価した結果、結晶形成の極初期段階にて-Al-O-P-の6員環構造ができているのではないかと考えられる。
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