本年度は、膜の透過分離性能の向上に向けた検討・評価を行うとともに、結晶の形成過程の評価を行った。膜性能向上については、これまで1段で膜合成を行っていたが、十分な分離性能が得られていなかった。その原因については、結晶間の空隙が残っており、水以外の分子の透過パスになっていることが考えられたため、2段合成を検討した。合成した膜は水おおよびIPAの透過量を測定することで、透過分離性能を評価した。結果、2段合成で得られた膜の透過分離性能は1段合成膜よりも高い透過分離性能を示した。また、2段目の合成ゲル組成が膜成長におよぼす影響を膜重量と結晶性を評価した結果、膜重量および結晶性は合成ゲル中のリン酸と構造規定剤の比率に依存する結果が得られた。この比率は合成ゲルのpHに大きく影響しており、酸性寄りであるほど膜成長が促進されることが示唆された。結晶形成過程の評価については、ケージあたりのOSDAの量が同じCHAとAEIでは、OSDAの立体配座の違いがそれぞれの構造の形成に関与することが示唆された。液相からの析出と結晶化が同時に起こる系ではOSDAのtg.tgの割合は時間経過により減少するものの、結晶化が起こる時間ではCHA型の生成する組成ではAEI型の生成する組成よりもtg.tgの割合が大きく、結晶化の際のOSDAの立体配座が生成物の選択性に寄与しうることが示唆された。AlPO4 chain modelを用いた検討からY/Zの大きい酸性領域では縮合が速く、AFI型やAPC型を形成する1D chainが形成されやすいことが示唆された。また、CHA型とAEI型でのOSDAの立体配座の違いはD6R層の積層の方向に関与することが示唆された。
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