本研究では、タンパク質のような水溶性の生体高分子と菌体などのソフトナノコロイドの分離操作の最適設計を実現するため、濾過抵抗に寄与するタンパク質の影響を解明して、最適な分離手法、装置や操作の設計のための指針を得ることを目的としてて実施した。 はじめに,酵母懸濁液の定圧濾過操作においてタンパク質の添加効果の濃度依存性を精査した。濾過速度の指標である定圧濾過係数を用いて評価したところ,定圧濾過係数の圧力依存性が大きく変化することを再確認した。ソフトコロイドであるため,濾過圧力の増加に伴って流路が小さくなり,濾過性がむしろ低下することが一般的である。しかし、タンパク質の添加によりその傾向は解消され、十分添加時では圧力の増加に従い,濾過性の向上が見られた。これは,酵母表面へのタンパク質の吸着に伴い,粒子の特性が変化したと考えている。この系の高効率的濾過法の提案を行うため,濾材の影響を調べ,条件によっては濾材を変えるだけで,濾過性が1.5倍程度向上することも確認した。その原因についての種々の検討を実施した。 なお,計画していたタンパク質の濾過ケーク中での滞留量とその濾過抵抗を考慮した解析法の提案には期間内では至らなかった。引き続き信頼性の高いデータを数多く取得し,実験結果から理論を構築し,拡張していきたい。 なお、本研究で得られた濾過分離に関する様々な成果については、論文発表や国内のみならず国際学会での研究発表を行い、情報発信に努めていく。
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