本研究では、これまでに高温高圧水を用いて有機修飾ベーマイトロッドをone-potで合成する技術を開発した(ベーマイトはアルミナの一種)。さらに、このベーマイトロッドを素材として利用し、フレキシビリティ・絶縁性を持ちポリイミド/アルミナ系で最高水準の熱伝導率を有する絶縁複合膜を開発した。しかし、この素材を実用化するためには、連続化技術の確立が課題である。現在バッチ式で10分以上かけて合成を行っているが、連続プロセスの小型化・省エネ化に向けて処理時間を短くすることが求められる。本研究では、まずバッチ式反応器で温度や圧力を操作因子として実験を行い、短時間でベーマイトロッドを合成できる条件を明らかにする。さらに、その結果に基づいて連続装置を作製し、連続化により制御可能となるパラメータを含めて連続合成プロセスの最適化を目指す。 平成29年度、本研究では、前述した目的を達成するために、メカニズムを明確化していくとともに連続プロセスに適した反応条件を明らかにするために、まずはバッチ式反応器を用いて、温度・圧力条件を操作因子として実験を行った。得られた生成物を分析することによって、結晶成長や有機修飾の挙動を明らかにすることができた。これにより、どのような条件で素早く粒子成長でき、かつアスペクト比を大きくできるかを明らかにできた。 平成30年度は、この定量的データに基づいて、連続装置の開発を行った。また、原料のベーマイト粉末を有機修飾剤に分散して送液する際の濃度条件が及ぼすサンプル性質(粘度、沈殿形成)の最適化も併せて行った。その結果400℃、30 MPaの条件下で、約2wt%のベーマイト粉末を連続的に送液し、有機修飾しながら高アスペクトの結晶が得られることを確認した。これにより、連続的な処理でも高アスペクトの有機修飾結晶を合成することができることを実証した。
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