研究課題/領域番号 |
17K14856
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中坂 佑太 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30629548)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 化学工学 / 触媒反応工学 / 拡散 |
研究実績の概要 |
結晶性アルミノケイ酸塩であるゼオライトは、石油精製・石油化学プロセスにおける重要触媒であり、炭化水素の分子サイズに近いサイズの細孔を有している。ゼオライトの活性点のほとんどがゼオライトの結晶内部に存在することから、反応分子はゼオライト結晶内を拡散し、活性点に到達することで始めて反応が進行する。そのため、ゼオライト結晶内の拡散現象が反応活性や選択性に影響する。実際の化学プロセスにおいて高温高圧の液相や超臨界流体が用いられるにも関わらず、このような反応場におけるゼオライト結晶内の炭化水素の拡散機構に関する情報はほとんどない。本研究では、これまで未解明であった高温高圧液相から超臨界流体下におけるゼオライト触媒内拡散係数測定法の確立とその機構解明を目指している。平成29年度は、定容法による高圧液相、超臨界流体中でのゼオライト結晶内拡散係数測定法の確立とその測定を目的とした。 1)ラマン分光光度計を用いることで高圧液相、超臨界流体中における拡散物質/溶媒混合溶液中の拡散物質濃度を測定可能であることを明らかにした。 2)ラマン分光光度計を用いた濃度測定法を用いることで、結晶内拡散係数の決定に必須となるゼオライトへの吸着に伴う芳香族化合物の濃度変化を高圧液相、超臨界流体中において測定できることを確認した。 3)拡散係数測定法の一つである定容法により高圧液相、超臨界流体中におけるゼオライト結晶内のトルエンおよび1-メチルナフタレンの拡散係数が得られた。 4)測定したトルエンおよび1-メチルナフタレンのゼオライト結晶内拡散係数は、200℃以下ではアレニウスの関係式を用いて相関されたが、臨界温度付近ではアレニウスの式で相関されない特異的な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は定容法による高温高圧液相、超臨界流体中でのゼオライト結晶内拡散係数測定法の確立とその測定を目的とし、①ラマン分光光度計を用いた拡散物質/溶媒の混合液濃度測定測定法の確立,②高温高圧液相、超臨界流体中における芳香族化合物のMFI型ゼオライト結晶内拡散係数測定を計画した。 平成29年度に導入したラマンプローブを用いることで、高温高圧液相および超臨界流体中での芳香族化合物、ナフテンのラマンスペクトルを観測することが可能であることを確認した。さらに、作成した検量線を用い、芳香族化合物/ナフテン混合溶液中の芳香族化合物濃度を測定することに成功した。 上記の濃度測定法により、高温高圧液相および超臨界流体中でのゼオライトへの吸着に伴う芳香族化合物の濃度変化を測定することに成功した。これにより、結晶内拡散係数を測定することが可能となったため測定法の確立に成功したと考えられる。 MFI型ゼオライトを用い、トルエンの気相、高圧液相、超臨界流体中での結晶内拡散係数測定を実施した。臨界温度付近で特異な結晶内拡散係数となることがわかった。そこで、拡散物質のサイズ、溶媒、ゼオライトの細孔径を変化させて測定したところ、同様に臨界温度付近で同様の結果が得られることが明らかになった。これは、バルク相中の拡散物質と溶媒の状態が結晶内拡散係数に影響を及ぼしているためであることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に確立した高温高圧液相、超臨界流体中での拡散係数測定法を用い、平成30年度は吸着剤の細孔径に着目し、芳香族化合物の結晶内拡散係数測定を実施する。得られた結果に基づき拡散機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に使用するゼオライトの合成や測定条件検討がスムーズに実施されたため、当初に予定していた謝金の支出が不要となるとともに、有機試薬や無機試薬の使用量抑制につながった。このため、次年度使用額が発生した。差額は、平成30年度の研究成果発表、ゼオライト合成に用いる無機試薬、拡散係数測定に使用する有機溶剤、実験器具費に充て、有効利用することで研究の加速化を図る。
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