申請課題の初年度において確立した無機ナノシート合成法により、種々の遷移金属元素の組み合わせからなる多孔質無機ナノシート触媒を系統的に合成した。研究計画最終年度に当たる今年度は、これら一連の多孔質ナノシート化合物群の人工光合成触媒への応用を検討した。具体的には、前年度に明らかにしたソルボサーマル合成条件により得られる単成分の遷移金属を含む多孔質ナノシート触媒、あるいは複数の遷移金属の組み合わせから合成されたナノシート触媒を用いて触媒活性を評価した。それぞれの触媒材料は、回転ディスク電極上へと担持し、水の酸化反応に対する触媒活性を電気化学的手法により評価した。触媒として末端の分岐構造が異なるコバルトナノシート触媒を用いた場合、分岐構造の多寡によりその触媒活性は変化し、分岐の複雑な多孔質ナノシート構造において酸化触媒活性は大きく向上することが明らかとなった。また、同様のナノシート分岐構造を有する多孔質触媒でも、コバルトやニッケル単成分のナノシート触媒に比べて、複数の遷移金属から合成された複合金属系ナノシート触媒において、その触媒活性は高くなった。さらに、ニッケル含有量の多い複合ナノシートにおいて、水の酸化反応に対する過電圧も大きく低下することが明らかとなった。一連の触媒性能評価より、急速加熱ソルボサーマル合成により得られる多数の分岐構造を有する多孔質ナノシート触媒が触媒的な水の酸化反応に高活性であり、人工光合成触媒材料として有望な材料群となることを示した。
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