研究課題/領域番号 |
17K14862
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 旭 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (30769443)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 光析出 / 色素 / ポルフィリン / 水素化 / 固定化触媒 |
研究実績の概要 |
金属ナノ粒子を酸化物などの担体粉末上に固定化した金属ナノ粒子担持型触媒は,自動車の排ガス浄化や燃料電池の電極など,我々の身の回りの様々な製品に用いられている.担持金属ナノ粒子触媒の性能を向上させるために,これまでその調製法に関する多くの研究がなされてきたが,触媒の更なる高性能化のためには,より精密な触媒設計を可能にする触媒調製法の開発が強く望まれる.そこで本研究では担体上の狙ったサイトに選択的に金属ナノ粒子を担持する手法を確立することを目的として,担体上へのポルフィリン色素の固定化とその可視光励起を利用した金属ナノ粒子の担持法の開発を行った. 種々の条件検討(酸化物の種類,光照射時間,光量,シランカップリング剤による酸化物の表面修飾,還元剤の添加,金前駆体など)を行い,最終的には,シランカップリング剤で表面修飾を施したシリカ担体に対して,還元剤をアスコルビン酸としたときに400 nmより長波長の可視光照射下で金イオンを還元することに成功した.また前駆体の金イオンに関しても3価の塩化金酸を用いた場合では光還元が起こらないが,それを1価のチオ尿素錯体とすることで還元可能であることを明らかにした.一方で,光照射をしない場合では金イオンの還元は起こらなかったことから,ポルフィリン色素の可視光励起により金イオンが還元されたものと考えられた.調製した金担持触媒を用いてエタノールのシリル化反応を行ったところ,室温下で反応が進行することがわかった.本研究成果に関しては,学会等で口頭・ポスターにて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成29年度は,ポルフィリン色素を金属酸化物の固体粉末上に吸着・固定化し,固定化されたポルフィリン色素の光励起による金ナノ粒子の形成を目的として,金イオンの還元・析出条件の検討を行った.金イオンが還元され,金粒子が生成する条件の検討に多くの時間を要したが,最終的にはポルフィリンを光励起することにより金属ナノ粒子を形成させることが可能な条件を明らかにすることができた.また得られた成果に関しても学会発表を行うことができたため,研究は概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討で金ナノ粒子を担体上に析出可能な反応条件を明らかにすることに成功した.しかしながら,生成した金粒子の粒子径が比較的大きいため,金粒子を活性点とした触媒利用という観点では,金粒子径の微細化が課題となった.そこで平成30年度は,初年度に得られた知見を元にして更にいくつかのパラメータを変化させることにより,金属ナノ粒子の微細化を検討する予定である.また,調製した触媒を初年度に検討したアルコールのシリル化反応以外の触媒・光触媒反応にも適用し,調製した触媒の有効性を幅広く検討していく.
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