研究課題
現在化石資源から得ている基幹化学品原料を再生可能なバイオマスから製造するプロセスの開発は重要である。特に芳香族炭化水素は様々な有用化学品の原料として重要であるが、バイオマスを原料とする実用的製造法がなく、そのプロセス開発は急務である。未利用バイオマスであるリグニンは、そのフェノール類への分解と続く脱酸素化により芳香族炭化水素に変換できるため、本プロセスの原料として最適である。リグニンのフェノール類への変換は近年温和な技術が多数報告されているが、フェノール類の芳香族炭化水素への変換は今尚過酷な反応条件(一般的には高圧水素ガス下300℃以上)を必要とする高コスト・低安全性のプロセスであり更なる改良が求められている。研究代表者は以前、フェノール類を脱酸素化して脂肪族炭化水素に変換する世界一温和な固体触媒反応(常圧水素ガス下110℃)を報告した。本研究ではこの成果を基盤にして、従来にない温和な条件下でフェノール類を芳香族炭化水素に変換する反応の開発を目的とした。また、そこで得られた知見を活かしたより高活性な触媒の開発、開発した反応のリグニン分解への応用を検討する。平成29~30年度は、以前研究代表者が開発したフェノール類を脂肪族炭化水素に変換するPt/H-ZSM-5触媒をイオン液体[bmim][OTf]で表面処理すると、反応の主生成物が芳香族炭化水素になることを発見し、詳細な反応検討や分析化学的手法を駆使して反応機構に関する知見を得た。令和元年度は、上記で得られた知見を基に新たな触媒を設計・開発し、その性能評価を行った。さらに、開発した触媒反応のリグニン分解への応用を検討した。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Chemistry A European Journal
巻: 25 ページ: 14762-14766
10.1002/chem.201902668