研究実績の概要 |
本研究ではCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術により、ニワトリ始原生殖細胞(PGC)の糖転移酵素を改変し、ニワトリ本来のα2,3結合シアル酸からヒト型のα2,6結合シアル酸に置き換え、よりインフルエンザワクチンの生産に適した鶏卵を開発することを目的としている。これまでの研究で遺伝子導入法の検討(リポフェクション法、エレクトロポレーション法)やCas9導入法の検討(プラスミドによる導入、リボヌクレオタンパク質での導入)を行ってきたが、遺伝子置換PGCの取得には至っていない。 今年度は違ったアプローチとしてトランスポゾンを利用した遺伝子導入法の検討も並行して行った。PGCへの遺伝子導入にはpiggyBacトランスポゾンを用いた。単純にヒト型α2,6結合シアル酸転移酵素(ST6Gal1)を発現させてしまうと、トランスジェニックニワトリのヒトインフルエンザへの感染リスクが高くなってしまうため、Cre/loxP組換えにより受精卵でST6Gal1を発現させるシステムを考案した。まずはニワトリ培養細胞DF-1にST6Gal1発現システムを導入し、Creリコンビナーゼ依存的なST6Gal1の発現とα2,6結合シアル酸の形成をRT-PCR及びレクチン免疫染色で確認した。次にpiggyBacトランスポゾンを用いてニワトリPGCにこのシステムを導入した。樹立した遺伝子導入PGCを2.5日胚に移植し、生殖腺への定着を観察した結果、25~50%の割合で移植PGCが定着していることがわかった。この結果より、今後遺伝子導入PGCを移植したキメラニワトリを交配することで、糖鎖改変トランスジェニックニワトリの取得が期待できる。
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