研究実績の概要 |
昨年末にCOP21で締結されたパリ協定では、2030年度までにCO2の26%(2013年度比)を削減することが求められており、低炭素循環型社会の実現は急務であると言える。微生物菌体触媒を用いた芳香族化合物生産は、バイオリファイナリーにおける重要な分野の一つである(世界のバイオ化学品市場総覧, 2013, 株式会社シード・プランニング)。近年注目されているシェールオイル革命により、今後、メタン等の炭素数の少ないエネルギー・化成品原料コストは低下すると考えられる。よって、芳香族化合物のような、より複雑な構造をした化合物の需要が急激に高まってくると予想されている。微生物を用いた芳香族化合物生産に関しても様々な報告が存在するが、産業利用を考えた場合に大きなブレイクスルーが必要とされている現状がある。大腸菌やコリネ型細菌を用いた芳香族化合物の生産において、芳香族アミノ酸合成経路の最適化等の側面から生産収率向上が検討されている(Gosset G, Curr Opin Biotechnol., 2009. 20: 651-658.)。しかしながら、解糖系近傍の前駆体から生産されるイソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類がほぼ理論収率近く生産される一方、芳香族モノマーについては収率面で大幅な改善の余地がある(理論収率の1/3以下)。本研究では、ピルビン酸バイパス/リサイクル技術という独自技術を適用した微生物を用いて芳香族化合物を高収率で生産可能なプラットホームの開発を目指す。
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