研究課題/領域番号 |
17K14872
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 聖幸 東北大学, 工学研究科, 助教 (00794067)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ビーム推進システム / 管内駆動ミリ波ビーム加速 / 導波管 / 閉じ込め効果 / 外部磁場 / ビーム誘起プラズマ / 衝撃波 / ホールパラメータ |
研究実績の概要 |
ミリ波ビームを用いた従来のフリーフライトビーム推進システムでは,ミリ波ビームの発散とプラズマによるミリ波ビーム遮蔽が問題となり,高高度飛行時及び繰り返しパルス照射時の推力維持が困難であった.本研究では,導波管内にビーム推進機を設置して機体前方からミリ波ビームを照射する Millimeter-Wave-Driven In-Tube Accelerator (MITA) を提唱し,ミリ波ビームの発散を抑制出来る事を示した.また,ビーム入射口とプラズマ排出口を分離する事でプラズマによるミリ波ビーム遮蔽を回避し,繰り返しパルス照射時の推力低下を抑制する事が出来る.導波管と反射鏡を模擬した電磁波伝搬解析,ドリフト拡散近似に基づくプラズマ反応流体モデルを用いたエネルギー吸収率算出,圧縮性流体力学コードによる衝撃波伝搬計算により,MITA によって得られる運動量結合係数を求め,それは Laser-Driven In-Tube Accelerator と同じオーダーである事を示した.ミリ波ビームを用いたペイロード打ち上げミッションを実施する際には,MITA によって初期加速を与える事でペイロード輸送効率を大幅に改善出来る可能性がある. また大気が存在しない高高度においても連続的な推力を獲得すべく,外部磁場を印加したロケットノズル内部に気体燃料を噴射し,ビームを照射する事で衝撃波を駆動する推進方式を提唱した.電磁波ー荷電粒子結合計算コードを用い,外部磁場印加時に高密度プラズマを形成出来る条件を模索した所,弾性衝突周波数が小さい化学種を使用する事でプラズマ伝搬を抑制し,プラズマに吸収されるエネルギー密度を高められる事を見出した.本研究により,MITA による初期加速からフリーフライト,更には宇宙空間における加速の全過程を,絶縁破壊型ビーム推進システムを用いて達成し得る事が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではビーム推進システムの推進及び飛行性能を改善出来る新技術を提唱し,数値計算に基づいて放電及び流体力学的現象の再現と性能評価を行った.管内駆動ミリ波ビーム加速システム MITA においては,管内衝撃波閉じ込め効果を利用した推力強化,管内駆動方式に基づく姿勢安定性の維持,ビーム発散の抑制,ビーム照射口とプラズマ排出口の分離によるビーム遮蔽効果の抑制により,推進及び飛行性能を劇的に改善出来る事を見出した.また大気密度が低い高高度においても連続的な推力生成を維持出来る様,外部磁場と気体燃料を用いた推進方式を提唱し,電磁波ー荷電粒子結合計算コードに基づく最適気体燃料選定を行った.この際,外部磁場中でのミリ波ビーム駆動プラズマの挙動を明らかにし,ホールパラメータ及び弾性衝突周波数とビーム周波数の比に基づく無次元パラメータによる電離波面伝搬速度及びエネルギー吸収率のスケーリングを実施した.本研究において提唱したこれら新技術が実現出来れば,ビーム推進システムによるペイロード輸送効率を大幅に改善し得る為に大変意義深い.ペイロード輸送効率改善に向けたビーム推進システムの性能改善が本研究課題の目的であり,その目的に向かっておおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では数値計算による提案技術の性能評価に留まっており,放電実験による実証が出来ていない.従って今後は放電実験装置を構築し,提案システムの実証実験を行っていく必要がある.筑波大学プラズマ研究センターの 28 GHz ジャイロトロンを使用し,管内駆動ミリ波ビーム加速システム MITA の実証実験を実施する予定である.ロードセルを使用したスラストスタンドを作成し,28 GHz ビーム照射時に獲得出来る推進性能を計測する.その後,推進性能及び電離構造の雰囲気圧力,ビーム出力,ビーム照射距離依存性を調査し,MITA によってビーム発散を抑え且つ衝撃波閉じ込め効果により高推力が獲得可能かを調査する予定である.
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