前年度までに、エタノールのエレクトロスプレー噴射によるパルスプラズマスラスタ(PPT)の真空中作動と、スラスタとしての力積発生を確認した。今年度はその成果をもとに、グリーンプロペラントを推進剤としたパルスプラズマスラスタ作動を試みた。 グリーンプロペラントは硝酸ヒドロキシアンモニウム (HAN)、水、硝酸アンモニウム、メタノールを混合したHAN系推進薬のSHP163を使用した。SHP163は自己分解、着火反応によって発熱する推進薬である。 PPTの電極形状は電磁加速型と電熱加速型の二種類を用意した。PPTのパルス放電エネルギは8ジュールとした。エレクトロスプレーのキャピラリ直径は30または100マイクロメートルで試験したが、SHP163はエタノールに比べて粘度が高いため30マイクロメートルでは噴射量が少なかったため、以下の報告は100マイクロメートルの場合とする。どの条件でも、SHP163のエレクトロスプレー噴射のみで力積の発生は確認できなかった。 真空中作動試験の結果、電磁加速型PPTでのSHP163噴射では、力積が30 マイクロNsとエタノール適用時と同等だった。供給位置を下流側に変更した結果、力積は46 マイクロNsに上昇した。一方で、電熱加速型PPTでのSHP163噴射では、85から103 マイクロNsの力積が得られた。この結果はエタノール適用時の57 マイクロNsと比べて大きい値であった。また電磁加速型PPTの作動で得られた力積よりも大きかった。これは電磁加速型に比べて電熱加速型の電極形状が空力的な膨張効果を推力に変換しやすく、さらに、SHP163の発熱反応も有効に力積向上に貢献したためだと考えられる。 以上より、グリーンプロペラントSHP163のパルスプラズマによる反応誘起と、その発熱反応エネルギの力積への変換を確認でき、その有用性を明らかにすることができた。
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