研究課題/領域番号 |
17K14878
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
和田 大地 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (10770480)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 揚力同定 / 逆解析 / 機械学習 / 光ファイバセンシング |
研究実績の概要 |
本研究では航空機主翼表面のひずみ分布を測定し、ひずみ分布情報から揚力分布を同定する技術を構築する。ひずみ分布測定には分布型光ファイバセンシング技術を適用し、揚力同定には逆推定ニューラルネットワーク(NN)を適用する。本技術を風洞試験により試験実証するのが最終目的である。 本年度の研究により、PC・ソフトウェア環境の整備と演算コードの実装を行い、ひずみから荷重の逆推定を行う数値解析プラットフォームを構築できた。これを用いてシミュレーションを行い、従来の有限要素法による逆解析と機械学習を用いた荷重同定の性能・特徴比較を行った。特にセンシング量やひずみ計測誤差が荷重同定精度に与える影響を明らかにした。NNを用いることでひずみ計測誤差による不安定性が解消されることを示せたが、これは従来の逆解析法の宿命的な欠点を克服することを示しており、学術的に高い価値のある成果であり、工学的にも非常に有益な知見となったと考える。本結果は学会発表により成果発信した。シンプルな実験・解析(翼ではなく平板を対象とした荷重同定)も実施出来ており、この成果も追加しながら、今後も国際学会や学術論文誌での成果発信を行う予定である。 また、次年度に予定している風洞試験の準備として、光ファイバセンサを搭載した多舵面を有する翼模型を構築した。多舵面の制御により揚力分布を調整でき、揚力分布同定技術の効果を独創的な形で示せると期待出来る。予備試験において、光ファイバセンサの動作や揚力分布同定用のプラットフォームとの連携が確認出来ており、計画を上回るペースで研究が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の研究期間は二年間であり、当初の計画の主旨としては、初年度を準備期間、次年度を実験・結果解析期間としていた。 本年度では数値解析環境の整備やアルゴリズム構築・実装など、ソフト面での準備を完了し、ハード面の風洞試験用翼モデルの準備まで完了出来た。加えて、機械学習による荷重逆推定の性能評価を行い、その成果をまとめたり、翼モデルの予備試験を行ったりした点において、当初計画を上回る進捗となった。 本研究の構想段階から解析手順を詳細に検討出来ていたことと、翼モデルの構築においては既存の装置等をうまく活用出来たことが要因である。
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今後の研究の推進方策 |
順調な進捗により、今後は風洞試験とその結果解析に集中出来る。風洞試験は年度内に三回行う予定を立て、十分な検証を行えるように計画した。 当初の研究の狙いに加えて、光ファイバセンシング情報を用いて、揚力だけではなく迎角等の飛行パラメータを同定する技術も検討することとする。これまでの研究により、観測情報と同定情報の間に(空力・構造的)相互作用があれば、機械学習を用いてパラメータ同定が可能である見込みを得られたからである。 また、本研究の成果をより汎用的な切り口で捉え、異分野の研究者とも積極的な交流を持って、今後の技術の展開や拡大を検討することとする。
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