研究課題/領域番号 |
17K14880
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
金森 正史 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (50770872)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 数式探査 / 微分方程式 / 遺伝的プログラミング / 流体力学 / 乱流 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、方程式探査アルゴリズムの構築と検証を行った。具体的には、方程式探査アルゴリズムを一から構築し、方程式が出力されるようなプログラムを実装した。そして、それに対して解析解が分かっている方程式を同アルゴリズムに入力し、その方程式が適切に再現されるかどうかを調べた。 同アルゴリズムは大きく分けて3つの段階に分けられる。すなわち、入力データの前処理、方程式の探索、そして不要な項のそぎ落としである。入力されるデータとして、指定された領域における分布とその分布の導関数が必要だが、ノイズを含むデータから導関数を精度よく計算するのは困難である。本研究では、ノイズの影響を除去しつつ再現度を高めるこのとできる数値微分法を導入し、この問題を回避した。方程式の探索には遺伝的プログラミングを用いたが、交叉アルゴリズムとして数式オブジェクトを用いた最適個体の生成法を提案し、それを導入することで従来よりも100倍近い収束加速が得られた。最後に、遺伝的アルゴリズムにより不要な項のそぎ落としを実現し、探索中に現れる不要な項を効率的に削除することに成功した。 上記のアルゴリズムを用いて、解析解のある或いは高精度で数値解が求められる方程式系の推定を行った。その際、ノイズを含むデータについても推定を行った。その結果、ノイズが無い場合には、元の方程式を完全に再現できることが分かった。一方で、ノイズが含まれる場合には、係数に違いが現れこそするが、数式の構造(具体的な項)については適切に再現されるということが分かった。この結果は、前述のノイズを極力除去した導関数評価があったために実現できたものと考える。 更に本年は、当研究機関で実施された実験結果に対して同アルゴリズムを試験的に適用した。その結果は、手動のフィッティングにより得られた方程式と類似した非線形性を示しており、実験等への応用も期待できる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定にあった平成29年度の目標に対して、一部大幅に進展したものの、一部は未実施であったため、全体としては概ね順調に進展しているものと判断した。具体的な未実施内容及びそれに対する方策については下記の欄を参照されたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、当初の予定よりも大幅に前倒しで研究を進めることができた。実際、今年度は方程式探査アルゴリズムの構築を主な作業内容としてきたが、実際には平成30年度で実施予定だった検証まで作業を進めることができた。一方で、多変数の偏微分方程式を用いた推定については未だ手を付けられていない状態である。 そこで、今後はまず多変数の方程式探査を実現するために、同アルゴリズムを改良するところから着手する。アルゴリズム自体は既に多変数を扱うことのできる状態にあるが、多変数化によって探索速度が悪化する結果となる。従って、アルゴリズムの改良・見直しや、分散並列化などを駆使し、プログラムの動作速度を改善する。 プログラムの改善を進めながら、それと並行して多変数の偏微分方程式の推定を進める。具体的には、偏微分方程式の中でも、比較的変数の数が少ない、小規模の問題を対象とし、それが適切に推定できるか検証を行う。 上記と同時に、他の研究者と協働して同アルゴリズムの適用先を探し、プログラムの問題点を洗い出しつつ、モデル方程式の構築という側面から本研究が寄与できる可能性を拡げる活動を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請書にて計上した合計額に対して、実際に交付を受けた金額が低かったため、購入計画に変更が生じ、必要なもののうち一部のみを購入することとなり、その結果差分が生じた。次年度はこの差分を、学会発表のための旅費、あるいは論文発表のための英文校正、論文掲載料などに充てる予定である。
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