2019年度は、方程式探査アルゴリズムを用いた乱流モデルの開発を実施した。具体的には、翼胴形態周りの低速・高迎角の非定常流れに対する時間平均解を、方程式探査アルゴリズムに導入し、この時間平均解を解に持つような乱流モデルの構築を試みた。 翼胴形態周りの低速・高迎角流れは、翼前縁において大規模な剥離が発生するため、これまでの乱流モデルによる解析精度は低く、より忠実度が高く、解析負荷も高い非定常解析が必要である。今回はこの対象を、JAXAにて開発した高速流体解析ソルバーFaSTARを用いて、RANS-LESハイブリッド手法の一つであるSA-DDESにより解析し、時間平均解を求めた。その結果を方程式探査アルゴリズムに導入し、SA-DDESの時間平均解を解に持つような新しいSA乱流モデルの構築を試みた。 その結果、従来の乱流モデルによる解析では再現が困難であった、大規模剥離後の空力係数、特に揚力の再現精度の向上を確認した。得られた方程式には、境界層内で切り替わる変数が多く登場していることから、既存の乱流モデルにおいても、境界層内部におけるモデリングが剥離流れ再現において重要となることが示唆される。
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