| 研究実績の概要 |
航空機CFRP構造の雷撃損傷は構造安全性に係る重要課題であるが，未だ雷撃損傷の詳細なメカニズムの解明と，複雑に連成する様々な物理現象を評価可能な数値解析モデルは確立されていない．本研究では，特に従来研究で十分な検討がなされていない，雷撃時の衝撃波がCFRPの雷撃損傷挙動に与える影響に着目し，実験的および数値解析的な検討を行った．
本研究ではまず，衝撃波の可視化手法により，雷電流に伴う衝撃波の伝搬挙動を実験的に観察した．伝播速度は供試材料の導電率と相関を示し，AL材で約400m/s，CFRPでは約500m/sであった．
また，雷撃時の供試材料の鉛直方向の変位挙動を明らかにするため，高速度撮影とDIC法を組み合わせた手法を構築した．最大電流値が-100kAの電流波形の場合，t=2mmのAL合金板で約3.5mm, t=4.7mmのCFRP積層板で約4mmの変位を得た．供試体中央部の変位履歴は周波数の変化を伴う振動波形となった．
更にFEM解析を用い，DIC法による試験結果を再現することで，雷電流付与時の衝撃波により供試体に加わる荷重の推定を行った．可視化による衝撃波伝播挙動の観察結果に基づき，荷重負荷領域は時間の経過とともに雷撃付与点から同心円状に拡散するものとした．荷重履歴として指数関数型を想定した場合，最大荷重150～200N程度のとき実験で得られた変位履歴と良い一致を示した．この面外荷重レベルではCFRPの内部損傷は生じないと考えられる．実際，表面に耐雷メッシュを適用したCFRPでは，耐雷メッシュ無しのCFRPと同程度の変位がDICによって観察されたが，内部損傷は生じていなかった．
本研究における一連の結果から，雷撃時の衝撃波のみでは供試体の破壊は生じず，損傷はジュール発熱等他の要因によって発生し，衝撃波は発生した損傷の進展に寄与していることが示唆された．
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