研究課題/領域番号 |
17K14886
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研究機関 | 弓削商船高等専門学校 |
研究代表者 |
佐久間 一行 弓削商船高等専門学校, 商船学科, 助教 (10779896)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 液中プラズマ / 海洋環境保護 / ビルジ水処理 |
研究実績の概要 |
本研究は、船舶において船底に溜まった油分を含む汚水であるビルジ水の分解処理を目指した液中プラズマ処理技術の開発を目的としている。液中プラズマは、水中の気泡内に大気圧プラズマを発生させる手法としてこれまでに水質浄化処理の研究が行われるなど着目されている。 本研究の初年度である平成29年度は、液中プラズマによるビルジ水処理実験を行うための装置開発を行った。実験装置は、反応容器、ガス系統および電気系統に大別できる。反応容器は、初期段階として試作電極やガス系統配管の調整を行うことから樹脂製の円筒管を利用した。将来的には、プラズマの計測を行うことや油分の分解などを行うため化学的に安定しているガラスを使用した反応容器を開発する。ガス系統は主に、水中に気泡を注入するために必要となる。プラズマを安定して発生させるためにも、大気圧プラズマを生成する際によく利用される希ガスであるアルゴンガスを注入できるようにガス系統を設置した。また、電気系統は、電源部と電極部に分けることができ、電極部には、水中を移動する気泡に対して遅れることなく電圧を印加できる高電圧パルス電源(玉置電子工業株式会社製、TE-HVP1010K300NP(C))を購入した。また、電極には、今年度はタングステン棒を対向させた棒電極を用いた。 初期実験では、これらの開発した装置を用いてプラズマの発生実験を行った。円筒の反応容器内に棒電極を対向させて配置し、60Hzの交流高電圧およびパルス電圧(10kHz、パルス幅約5us)を印加して放電させた。いずれの電源においても放電し、60Hzの交流における分光計測ではAr IやOHラジカルによる帯状の発光が計測され、今後の油分分解実験の実施につながる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、実験装置の開発および鉱油などの油分を用いた実験を計画していた。実験装置は計画通りに開発を行えたが、一方で、油分濃度計と電源の購入を検討していたため、電源の購入に時間を要した結果納入が遅くなった。このため、初期実験としてのプラズマ生成実験は行えたが、二次元電極の開発や鉱油を使用した実験を行うまでには到らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究によって、開発した装置によって水中の気泡内にプラズマを生成することが可能であることが明らかとなった。このため、より安定した放電やプラズマの大面積化に向けた電極の開発および最適化を行う一方で、分光計測など液中プラズマの計測を行う。また、平成29年度に予定していた鉱油等の油分を用いた実証実験を行う。液中プラズマ実験装置において、油分の分解が可能となれば、弓削商船高等専門学校が所有する練習船弓削丸のビルジ水を採取して分解実験を実施する。一方で、それらが困難な場合には、再度電極の改良および注入するガスの検討を行う。 また、これまでの研究成果について学会発表などを積極的に行い、研究をより加速させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に遅れが生じたため、平成29年度に計画していた鉱油等を用いた実験を行うことができなかった。このため、実験に使用するための購入費用が次年度使用額として生じた。平成30年度は、平成29年度に予定していた実験として実験用試料の購入を行い研究を進めるとともに、液中プラズマの計測機器の開発および水中油分の分離実験結果を計測するための計測機器のレンタル費用などに使用する予定である。
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