本研究ではレーザ・アークハイブリッド溶接の施工法についてレーザ単独溶接による仮付け溶接に着目し、日本独自の溶接施工方法の開発を目的としている。(同溶接法の導入で先行する欧州圏では、部材の配材に大型付帯設備が用いられているが、この付帯設備の投資コストが懸念されている。)具体的実施内容として、a)仮付け溶接部の破壊クライテリアの同定、およびb)溶接変形に起因する仮付け溶接部の拘束反力の同定であり、研究の最終段階としてc)長尺継手(長さ1M)を用いた実証実験を実施する予定であった。今年度の成果要旨は以下の通りである。 a)仮付け溶接部の静的破壊のクライテリアを明らかにした。また溶接変形解析に供するメッシュサイズに応じた材料物性値を同定した。 b)溶接変形に起因する拘束反力の同定を目的として、熱弾塑性FE解析を実施した。その結果、仮付け溶接部には比較的大きな溶接線方向せん断応力、及び溶接線直角方向せん断応力が生じていた。したがって、最終的に残留する溶接変形(縦板の横倒れ変形)に起因する拘束反力によって仮付け溶接部に割れが生じるのではなく、溶接施工中の局所的変形が原因となって割れが生じることを明らかにした。 c)一方、他者の研究において長尺継手の場合、試験片サイズと異なる変形に起因し仮付け溶接部に割れが生じる場合があることが明らかとなった。そこで、実験の代替として熱弾塑性FE解析(長さ900mm)を実施し、溶接施工中の変形挙動についての検討を行った。しかしながら、他の研究で明らかになったような変形での破壊、および仮付け溶接部に生じる応力について、試験片サイズでのそれと大きな差は見られなかった。すなわち、長さ1M程度の継手であれば、試験片サイズで検討した仮付け条件の適用が可能であることを明らかにした。
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