研究課題
本研究では、直線磁化プラズマ乱流実験において、 乱流(ドリフト波)と流れ(帯状流)の2体系に、“孤立渦”を加えた3体系のダイナミクスを解明することを目標としている。平成29年度は、3体系における孤立渦の役割を明らかにする為に、既存の計測装置であるラングミュアプローブ(径方向多点プローブ、周方向多点プローブ)を用いて、外部制御パラメータである磁場強度と中性粒子ガス圧及びプラズマ生成パワー制御を行い、種々の乱流状態について系統的に観測を行った。加えて、無摂動な手法である、レーザー誘起蛍光法(LIF法)の開発を行った。開発においては、ヨウ素セルを用いたレーザー波長計測の高時間分解能化と蛍光計測における受光フィルターの狭帯域化及び高透過光ファイバーの採用、アイソレーションアンプの採用により、ノイズ低減・高信号化を行い、S/N(信号とノイズの強度比率)の改善を行った。さらに、静電プローブを持いた流れ計測手法である、マッハプローブをLIF法で補正可能な位置に新たに設置した。具体的な成果として、孤立渦の生成・消滅が、主に乱流とその高調波が位相変調されることに起因することが明らかになった。位相変調は、流れの変動と同期していることも分かった。乱流の振幅も流れによって変調される結果が得られたが、振幅変調だけでは、孤立渦の生成・消滅を説明できなかった。これにより、流れによって乱流の位相変調を引き起こすことが、孤立渦の生成・消滅に重要な役割を果すことが明らかとなった。本成果を発表した、Plasma Conference 2017において、2017年度プラズマ・ 核融合学会賞若手学会発表賞を受賞した。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画では、乱流(ドリフト波)・流れ(帯状流)・孤立渦の3体系における孤立渦の役割を明らかにする為に、3体系のエネルギー分配則、 3者間の駆動・減衰力の変化、孤立渦の直接的な輸送への寄与を求める。また、孤立渦の生成・消滅時における、これらの時間的変化を得ることで3者間の因果関係を明らかにする。平成29年度は、3体系における孤立渦の役割の変化を明らかにするため、外部制御パラメータスキャンにより、乱流状態が異なる状態について系統的に観測を行った。現在、観測結果を用いて解析を進めている。特に、上記で示した通り、孤立渦の形成・消滅が、流れによって乱流とその高調波の位相変調を引き起こすことに起因することが明らかになり、3者間の因果関係解明へ大きな一歩となった。一方で、揺動は、中心部においてラングミュアプローブによる摂動の影響を受ける可能性があるので、無摂動な手法で検証を行う為、レーザー誘起蛍光法(LIF法)の開発を行った。乱流揺動を測定するために、レーザー波長測定の高速化や受光系の外部ノイズ削減により、高時間分解能化とS/N改善を行った。マッハプローブによる乱流揺動測定も同時に可能とするため、マッハプローブの設置を行った。以上を総合し、おおむね順調に進展していると考えている。
今後は、平成29年度の成果を元に、プラズマ中の乱流と流れ、孤立渦の共存系において、乱流と流れ、孤立渦間の駆動減衰への寄与を求める。また、孤立渦による粒子・運動量輸送への寄与を求める。無摂動な手法で検証を行う為、平成29年度で開発したLIF測定システムによる計測も行う。S/Nが十分でない場合は、マッハプローブによる乱流測定結果をLIF法で補正する形で検証を行う。
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