研究課題
本研究では、直線磁化プラズマ乱流実験において、 乱流(ドリフト波)と流れ(帯状流)に加えて乱流よりも寿命が長く、周方向及び径方向にローカルな構造である“孤立渦”間のダイナミクスを解明することを目標としている。平成30年度では、以下の成果を得た。孤立渦の減衰において、新たに、乱流よりも寿命が短く、周方向及び径方向にローカルな構造である“飛沫”構造が関与する可能性が得られた。“飛沫”の2次元構造を新規解析手法で導出し、孤立渦と同じ周方向及び径方向に形成することを明らかにした。バイスペクトル解析により、“飛沫”は、孤立渦と非線形結合していることがわかった。また、孤立渦と“飛沫”の振幅の変化を比較したところ、“飛沫”は孤立渦の形成より遅れて生成することがわかった。加えて、孤立渦は内向きの粒子輸送に対して、“飛沫”は外向きの粒子輸送となることがわかった。これらにより、“飛沫”は孤立渦による速度勾配に起因する不安定性により励起される可能性が得られた。不安定性の候補をいくつか検討したが、いずれも孤立渦を減衰する効果を持つ不安定性であり、“飛沫”は孤立渦の減速に寄与する役割をもつと考えられる。平成29年度までの成果で、孤立渦は流れを加速し、また流れは乱流を介して孤立渦を形成することが明らかになっている。これは、流れおよび孤立渦構造がより強くなる過程を示している。本研究成果によって、孤立渦の減速過程の可能性が得られたことにより、孤立渦が流れに与える影響が“飛沫”の形成で小さくなり、また、流れが乱流を介して孤立渦の形成を弱める過程が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、乱流・流れ・孤立渦構造に加え、新たに飛沫構造を加えた解析を行い、バイスペクトル解析や構造ごとの時空間構造の変化を観測することで構造間の駆動・減衰、輸送を得た。特に、平成30年度では、平成29年度の成果で得た流れと孤立渦の構造形成を強める過程とは逆の、流れと孤立渦の構造形成を弱める機構が得られたことにより、乱流・流れ・孤立渦構造間の因果関係の描像がより明らかとなった。これは、本研究目標へ向けて大きな進展となった。加えて、無摂動な手法である、レーザー誘起蛍光法(LIF法)を用い、描像の検証と定量化へ向けた観測を進めている。実験の効率的な運用のため、レーザー伝送計の見直しや、散乱光計測フィルターの交換などを行った。しかし、乱流揺動測定に必要なS/Nが現状得られていないため、直接計測であるマッハフローブを校正する形で乱流測定を行うこととし、校正のための初期データを得た。一方で、LIF法の改良を行なう中で、大幅なS/N改善のためトモグラフィーの技術を応用した新規LIF測定システムの考案を行った。以上を踏まえ、実験において遅れはあるものの、本研究目標達成に向けては順調であるため、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は、平成30年度の成果を元に、乱流・流れ・孤立渦及び飛沫間のダイナミクスの系統的な整理を行う。別途、マッハプローブによる乱流測定結果を無摂動な手法であるLIF法を用いて校正し、得られた成果の検証を行なう。また、新規LIF法により乱流揺動測定による直接検証及び定量化を試みる。得られた成果は学術論文として発表すると同時に学会等で発信していく。
未使用額が少額のため、物品購入に当てることができなかった。今年度の実験における光学部品等の購入に充当する。
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Physics of Plasma
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