研究課題
本研究の目的は,トーラスプラズマにおいてL-H遷移の際に発生する電場の生成機構を実験的に明らかにすること,及び,電場と乱流の相互作用を解析し,乱流輸送抑制のメカニズムを明らかにすることである.本年度は,スペインのエネルギー環境技術センター(CIEMAT)のプラズマ閉じ込め装置TJ-IIにおいて,プラズマが自発励起する対称流れ場「帯状流」の基礎的特性解明のためのデータ解析を行った.電子サイクロトロン加熱および中性粒子加熱と呼ばれる二つの異なる加熱方法で生成したプラズマにおいて,10kHz以下の低周波数でポロイダル・トロイダル対称性を持つ帯状流を,静電プローブを用いて計測した.対称性を持つ揺動のみを計測するため,ポロイダル角・トロイダル角の異なる位置に二つのプローブを挿入し,強い相関を持つモードのみに着目した.どちらのプラズマにおいても,低周波数領域に帯状流の特徴的な揺動が観測された.二つのプラズマでは,主に定常の電場構造が異なる.それぞれのプラズマで計測した帯状流は,その空間構造が大きく異なることが世界で初めて示された.また,その空間構造は,振動周波数にも依存することを解明した.このことは,帯状流を平面波で近似した際に,帯状流波数が実験条件および周波数に依存することと対応している.帯状流波数スペクトルをそれぞれのプラズマにおいて新たに求めた.今後は定常の電場構造やその他の実験条件がどのように帯状流の空間構造やその周波数特性に影響を与えるかに焦点を絞って研究を進めていく.
1: 当初の計画以上に進展している
計画の主目的であったスペインTJ-II装置での実験データ解析を行い,重要な物理成果を得ることができた.すでに成果も出版されており,帯状流の重要な特性を新たに発見・発信することができている.今後は現象のより深い理解を得るための研究を進めていく.
データ解析を継続し,帯状流の特性を実験的に明らかにしていく.また,現象理解のための理論構築のため,理論家と協力しモデル化を進めていく.特に近年,定常電場と帯状流・乱流構造の相互作用が着目されており,得られた実験結果を取り入れたモデリングを進めていく.
物品購入の端数が残額となった.学会参加旅費や学会参加費等に使用する予定である.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
Nuclear Fusion
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