研究課題
燃料同位体イオン(D,T)及び He灰の輸送過程を自己無撞着に扱う第一原理的な解析は、ITERや原型炉における核燃焼プラズマの炉心性能や運転シナリオを左右する重要性の高い課題である。本研究では同位体イオンや不純物イオンで構成される多粒子種プラズマにおける乱流輸送特性を明らかにする。さらに、巨視的輸送方程式系と局所ジャイロ運動論方程式の連成計算モデルから成る第一原理的大域乱流輸送コードTRESS+GKVを開発・拡張し、D-T-He炉心プラズマにおける輸送過程や分布形成を解析することで、外部加熱や核融合反応と無矛盾な密度・温度分布の予測基盤の構築を推進する。平成29年度においては、局所乱流コードGKVを用いて同位体イオンが乱流輸送特性に与える影響を明らかにする研究に取り組んだ。特に捕捉電子不安定性(TEM)に対して顕著なイオン質量依存性が表れ、特定の密度領域に対しては、重水素などのより質量の大きいイオンから構成されるプラズマにおいて閉じ込め性能が改善し得ることを明らかにした。これらの理論予測に関して、LHD重水素実験との連携によって実証研究が推進されている。大域連成輸送コードTRESS+GKVの開発に関しては、イオン温度分布と電子温度分布をより高速かつ安定に解くための数値計算手法の検討と導入を行った。動的加熱法やニュートン・イタレーション法などの導入により、外部加熱と乱流・新古典輸送が互いに釣り合って達成される定常状態が、より少ない計算コストで得られることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
燃焼プラズマにおける大域的な分布形成を高精度に予測するためには、燃料同位体イオンや不純物イオンがプラズマの閉じ込め性能に対してどのような影響を与えるかを定量的に解析・評価することが不可欠となる。平成29年度に得られた、捕捉電子不安定性駆動乱流輸送に対するイオン質量効果の研究成果は、上記の重要課題に対して直接的な貢献を果たすため、計画は概ね順調に進展していると言える。
イオン質量効果に加え、プラズマ中に形成される径電場やトロイダル回転は輸送・閉じ込め特性に強く影響することがこれまでの実験および理論研究で明らかになっている。TRESS+GKVにおいてもそれらの評価手法や、ペデスタル領域などの周辺プラズマに対する適切な境界条件などを検討する。拡張された計算モデルによって、プラズマ回転や同位体質量が大域的な輸送・閉じ込め特性に与える影響をJT-60UやJET、LHD、W7-X等の実験と連携しながら解析する。また、正確な密度分布発展の計算に必要となる粒子ソース/シンクや核融合反応効果を組み入れる拡張を行い、実施期間後半における核融合反応を加味した燃焼プラズマの大域的輸送解析の準備を整える。また、輸送と分布に応じて変動する磁場構造の効果に関する拡張も検討を進める。
シミュレーション結果や研究データなどの保管を目的とした大型記憶メディアの購入を予定していたが、平成29年度の一連の研究データについては大型計算機に付随した記憶メディアの容量に収まるものであったため、そちらを有効活用するに至った。次年度使用額については、以後発生するシミュレーション結果や研究データも含めて保管するための大型記憶メディアの導入に活用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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