研究課題/領域番号 |
17K14899
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
仲田 資季 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40709440)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 同位体効果 / プラズマ乱流 / 大域シミュレーション |
研究実績の概要 |
燃料同位体イオン(D,T)及び He灰の輸送過程を自己無撞着に扱う第一原理シミュレーション解析は、ITERや原型炉における核燃焼プラズマの炉心性能の予測・評価や運転シナリオを左右する重要な課題である。本研究では同位体イオンや不純物イオンで構成される多粒子種プラズマにおける乱流輸送特性を明らかにする。さらに、巨視的輸送方程式系と局所ジャイロ運動論方程式の連成計算モデルから成る第一原理的大域乱流輸送コードTRESS+GKVを開発・拡張し、D-T-He炉心プラズマにおける輸送 過程や分布形成を解析することで、外部加熱や核融合反応と無矛盾な密度・温度分布の予測基盤の構築を推進する。 平成31年度においては、同位体イオンの混合状態や磁場の幾何形状が乱流輸送特性に与える影響に関する研究をLHD実験との連携によって推進した。LHDにおいて適用された高精度のバルク荷電交換分光計測により、軽水素イオン密度分布と重水素イオン密度分布の同時計測が可能となり、得られた実験データに対する微視的不安定性解析を実施した。その結果、同位体イオンの混合状態と分離状態においては支配的となる微視的不安定性が遷移することを明らかにした。このような乱流・輸送特性は3次元ヘリカルプラズマにおいては磁場の幾何形状に強く依存することが示唆されてきた。そこで、LHDの磁場形状制御コイルなどで実現される幾種類の配位に対して乱流輸送解析を行った。その結果、測地曲率とゾーナルフロー形成の強い相関が示されるとともに、非線形乱流シミュレーションデータを基にした簡約化モデルが構築された。大域連成輸送コードTRESS+GKVについてもMPMD方式と呼ばれる並列化を施すことにより、高効率な並列計算や物理モデル拡張が用意となった。今後は、上記の乱流モデル等を組み込んでいく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
燃焼プラズマにおける大域的な分布形成を高精度に予測するためには、燃料同位体イオンや不純物イオンが磁場の幾何形状依存性と相まってプラズマの閉じ込め性能に対してどのような影響を与えるかを定量的に解析・評価することが不可欠となる。平成31年度に得られた、LHD実験と連携した乱流輸送に対するイオン質量効果の研究成果および大域連成輸送コード並列化の拡張は、上記の重要課題に対して直接的な貢献を果たすため、計画は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ中に形成される径電場やトロイダル回転は輸送・閉じ込め特性に強く影響を与えうる物理効果であるため、TRESS+GKVにおいてもそれらの物理効果の導入をすすめる。また、ペデスタル領域などの周辺プラズマに対する適切な境界条件なども引き続き検討する。さらに熱輸送の同位体効果のみならず、粒子輸送の同位体効果の解析についてもヘリカル系・トカマク系の実験と連携しながら進め、その知見やモデリングを大域連成輸送コードへ反映していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、参加予定だった国内学会が開催延期となったために次年度使用額が生じた。これについては、2020年度に延期された学会の参加費などで執行予定である。
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