研究課題/領域番号 |
17K14906
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
田中 真悟 一般財団法人電力中央研究所, 原子力技術研究所, 特定主任研究員 (90749037)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射性廃棄物処分 / ベントナイト / 界面動電現象 / 物質移行 / 間隙水化学 / 石膏(硫酸カルシウム) / 方解石(炭酸カルシウム) / 析出 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究において、圧縮ベントナイト中のCa当量分率(Ca濃度)がベントナイト空隙水中のCaイオンの活量や石膏および方解石の過飽和度を決定する重要なパラメータであることが分かった。さらにCa当量分率が石膏および方解石の析出形態(凝集体サイズや数密度)に及ぼす影響について検討した結果、Ca当量分率が高い領域では新たな核形成が支配的となり、Ca当量分率が低い領域では結晶成長が支配的となることを実験的に見出した。一方で、圧縮ベントナイト中の化学反応および鉱物析出現象についての理解をさらに深めるためには、Ca当量分率と鉱物の核形成および成長速度との関連性を明らかにすることが重要と考えられる。そこで今年度は、これらの関連性を明らかにするための新たな実験を行った。 具体的には、CaおよびSO4の対向的な移行距離が一定となるように、電荷量(電流値×時間)を一定としながら、電流値(すなわちCaおよびSO4の反応時間)を変化させた析出実験を行い、石膏析出挙動と反応時間との関連性を調べた。その結果、Ca当量分率75%のときは電流値(すなわち反応時間)によらず速やかに石膏が析出するのに対し、Ca当量分率25%のときは、電流値が小さい(すなわち反応時間が長い)場合に石膏が析出し、電流値が大きい(すなわち反応時間が短い)場合は石膏の析出が認められないことが分かった。これらの結果から、Ca当量分率(すなわち過飽和度)の増加に伴い、石膏の析出反応が促進されることについて、定性的な理解を得ることができた。具体的には、圧縮ベントナイト中においても自由水中と同様に、石膏の過飽和度の増加に伴い、核形成速度および成長速度が増加する可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応が単純な石膏については実験とモデル化が順調に進展している。2018年度に引き続き、2019年度はCa当量分率と石膏の析出形態(サイズ等)との関連性について考察した論文がApplied Clay Scienceに掲載された。方解石についても良好な実験データを得ることができ、結果を国際会議(Migration 2019)で発表した。したがって、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は析出反応を速度論的にモデル化するため、核形成および結晶成長と過飽和度の関係について理論面での考察を加える。また、国内外の研究者との議論の過程で、ベントナイト緩衝材に含まれる珪砂が二次鉱物の析出に重要な役割を果たしている可能性が見出された。そこで、補助期間を1年間延長し、ベントナイト中の鉱物析出反応に及ぼす珪砂の影響を明らかにするための新たな実験を追加実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画を詳細に検討することで、当初よりも少ない実験数で目標を達成できたため、未使用額が生じた。研究の目的をより精緻に達成するため、未使用額については追加の実験に要する経費に充てることとしたい。
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