研究実績の概要 |
原子燃料サイクルから排出される高レベル放射性廃液に含まれている白金族元素であるPdを分離・回収し、水素再結合触媒等として有効利用するため、選択性の高い吸着材の開発を行った。白金族元素に親和性の高い硫黄含有アミド誘導体及びアミンを多孔性シリカ/ポリマー複合担体粒子(SiO2-P)に含浸担持した吸着材を調製し、模擬廃液を用いて吸着特性を調査すると共に、チオジグリコールアミド型とアミン型抽出剤の含浸率等を検討した。また、合成が容易な新規チオジグリコールアミド酸型抽出剤(N,N,-ジオクチル-チオジグリコールアミド酸及びN-メチル-N-オクタデシル-チオジグリコールアミド酸)を担持した吸着材及びチオジグリコールアミド酸構造を化学修飾したシリカゲルを開発し、吸着特性を調査した。これらの吸着材はPdを選択的かつ迅速に吸着し、廃液からのPdの吸着分離には非常に有効であった。ただし、溶離にはチオ尿素、チオジグリコール酸等の硫黄を含む錯化剤の使用が必要であった。 回収したPdの触媒化には、放射線化学的手法の利用を試みており、Pd硝酸溶液、Pd-チオ尿素硝酸溶液にシリカ、アルミナ、チタニアを浸漬し、γ線照射によって生成する水和電子、固体酸化物表面に生成する二次・誘起電子によるPdの還元・担持が可能かを調査した。硝酸濃度が高い場合は還元が起こらないが、0.1mol/L程度となると吸収線量の増加と共に還元量が増加した。ただし、チオ尿素が存在すると別の白色沈殿が生じ、Pdの還元・担持が阻害されることが判明した。 これに対し、硫黄を含まないヒドロキシオキシム型抽出剤(5,8-ジメチル-7-ヒドロキシ-6-ドデカノンオキシム)の使用を考案し、これを用いた吸着材を調製して吸着特性を調査したところ、Pdの吸着性能は良好であった。また、硫黄を含まない錯化剤での溶離の可能性を見出した。
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