研究課題/領域番号 |
17K14907
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 辰也 東北大学, 工学研究科, 助教 (20757653)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バックエンド / 高レベル放射性廃液 / 廃棄物資源化 / パラジウム / 放射線化学 |
研究実績の概要 |
原子燃料サイクルから排出される高レベル放射性廃液に含まれている白金族元素であるPdを分離・回収し、水素再結合触媒等として有効利用するため、選択性の高い吸着材の開発及びPd回収プロセスの検討、並びに回収Pdを用いた触媒合成の検討を行った。Pdの回収に錯化剤としてチオ尿素を用いると、放射線化学的な触媒合成法において不利となることから、ヒドロキシオキシム型抽出剤(5,8-ジメチル-7-ヒドロキシ-6-ドデカノンオキシム)を含浸担持した吸着材を調製し、Pdの分離・回収を試みた。やはり、チオ尿素水溶液によってPdを効果的に回収することが可能であったが、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノンオキシムを錯化剤として用いることで吸着したPdの一部が回収可能であった。また、高濃度硝酸(約4 mol/L以上)によってヒドロキシオキシム型抽出剤を分解し、Pdを回収することも可能であった。加えて、溶離剤としてチオシアン酸塩やチオジグリコール酸水溶液なども検討し、Pd分離プロセスを検討した。 回収したPdの触媒化には、還元担持用媒体としてシリカ、アルミナ、チタニアに加え、ジルコニアも検討を行った。これらの酸化物固体とPd(II)を含む水溶液を密封してγ線照射を行い、Pdの還元担持挙動を検討した。硝酸濃度が低いほどPd(II)の還元に有利であったが、2-プロパノール等のアルコールを添加することでより還元が促進された。 合成した触媒の性能評価については、バッチ式での気相中水素濃度の変化から性能評価を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの吸着材について、Pdに対し良好な吸着性能を有することを明らかにし、カラム試験の結果から分離・回収プロセスの検討を行った。回収したPdの放射線化学的手法を用いた触媒化において、強力なPd溶離剤であるチオ尿素が存在すると還元反応が阻害されるため、これ以外の溶離剤を検討した。このことによるPdの触媒化への影響については今後検討を進めるが、方法は確立されているため、大きな障害はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
いくつかの吸着材について、Pdに対し良好な吸着性能を有することを明らかにし、カラム試験の結果から分離・回収プロセスの検討を行っており、今後は調整を行う。また、Pdを効率よく溶離可能で、かつ触媒化に悪影響の無い溶離剤のさらなる探索を並行して行う。回収Pdの放射線化学的手法を用いた触媒化においてはPd、溶離剤、硝酸濃度や吸収線量及び線量率等をパラメータとして、還元・担持挙動の把握に務め、合成したPd触媒の性能評価を行う。
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