研究課題/領域番号 |
17K14908
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秋山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80746751)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 5価ウラン化合物 / 遷移金属 |
研究実績の概要 |
ウラン化合物に含まれるウランの価数は4価、6価が最も一般的である。本研究では生成がほとんど確認されていない5価のウラン化合物に着目し、その生成メカニズムを解明することを目的としている。本年度はウラン酸化物と遷移金属である鉄、クロム、ニッケルを混合し、1200℃、1400℃酸化雰囲気で加熱処理を行い5価のウラン化合物の生成条件を調査した。その結果、ウラン酸化物と鉄は1200℃では反応せず、1400℃で5価のウラン化合物とみられる相が生成した。しかし、未反応のウランと鉄の成分を多く含むためこの方法で作成した5価のウラン化合物は分析に適さないと判断した。また、ウラン酸化物とクロムは1200℃、1400℃いずれの温度でも反応し5価のウラン化合物とみられる相が生成した。ウラン-鉄系に比べ反応性が高く、1200℃で24時間加熱処理を行うことで未反応の成分がほぼないウラン化合物を生成することができた。ウラン酸化物とニッケルについては1200℃、1400℃いずれの温度でも反応せず、別の合成法が必要であると思われる。ウラン-鉄系についてはより純度の高い5価のウラン化合物を生成するため、化学量論比を計算した混合物を石英反応管中に真空封入し加熱処理を行った。その結果、純度の高い5価のウラン化合物を生成することができた。ウラン-鉄系の5価のウラン化合物とウラン-クロム系の5価のウラン化合物試料をSPring-8にてXAFS解析を行い、ウランは5価である可能性が高いことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウランと鉄、クロム、ニッケルの混合物を1200℃、1400℃酸化雰囲気で加熱処理を行うことで5価のウラン化合物の合成を試みた。加熱処理後の試料はXRD及びSEM-EDXを用いた分析を行うことで相解析を行った。その結果、ウラン-クロム系のみ純度の高い5価のウラン化合物を生成することができた。さらにSEM-EDXを用いた分析により生成したウラン化合物に含まれるウランとクロムの原子数比が1:1の相であることが確認されたことから、生成した相はCrUO4であると考えられる。ウラン-鉄系についてはより純度の高い5価のウラン化合物(FeUO4)を合成するため化学量論比を計算した混合物を石英反応管中に真空封入し加熱処理を行った。具体的には、UO3とFeO、U3O8とFe3O4をそれぞれモル比1:1で混合して加熱処理を行った。その結果、出発物質のウランの価数によらずいずれの試料も純度の高いFeUO4を生成することができた。今後は引き続きウランとその他の遷移金属元素(ニッケル、コバルト)の化合物の合成を行う。ウラン-鉄系の5価のウラン化合物とウラン-クロム系の5価のウラン化合物試料をSPring-8にてXAFS解析を行った。その結果、XANES領域の比較により吸収端のエネルギーがUIVO2とUVIO3の間に存在したため、ウランは5価である可能性が高いことが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
H29 年度はウラン-鉄系及びウラン-クロム系の5価のウラン化合物の合成及び分析を行った。今後は引き続きウランとその他の遷移金属元素(ニッケル、コバルト)の化合物の合成を行う。ウランとニッケルについては1200℃、1400℃酸化雰囲気の加熱処理で反応しないことが確認されたため、ウラン-鉄系と同様に化学量論比から計算して石英管に真空封入して加熱処理を行う。コバルトについては1200℃、1400℃酸化雰囲気の加熱処理を行い、生成条件について評価を行う。これらの加熱実験で得られた試料はウラン-鉄系、ウラン-クロム系と同様にXRD及びSEM-EDX分析を行い、相関係の評価を行う。純度の高い5価のウラン化合物を合成したら放射光施設にてウランの価数を評価するために、X 線吸収微細構造(XAFS)分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった消耗品が既存のもので代用できたことや、交換が必要になると考えられていた実験器具が1年間使用することができたため、予定よりも支出を抑えることができた。翌年度は物品費の他に一部人件費に充て、実験補助者を雇い実験量を増やすことと、国際学会での成果発表を行うために予算を使用する。
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