研究課題/領域番号 |
17K14909
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
遠藤 知弘 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (50377876)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 未臨界 / 実効中性子増倍率 / 即発中性子減衰定数 / データ同化 / ベイズ推定 / 摂動論 / 実効遅発中性子割合 |
研究実績の概要 |
数値計算による核燃料の臨界安全性(実効中性子増倍率keff)の予測精度向上および不確かさ低減を目的とした、未臨界状態における核特性(即発中性子減衰定数α)の測定値を活用したデータ同化手法に関する研究として、平成29年度は以下に述べる研究を実施した。 遅発中性子先行核の効果を陽に取り扱ったω固有値方程式に基づいて、エネルギー多群拡散計算コードを試作した。一次摂動論に基づくことで、ω固有値方程式のforward/adjoint固有関数を用いた即発中性子減衰定数αの感度係数評価手法を新たに考案した。試作したエネルギー多群拡散計算コードを用いて、直接法により得られたαの感度係数の参照値と比較することで、摂動論に基づいたα感度係数評価手法の妥当性を確認した。 未臨界実験測定結果を活用したデータ同化手法に関する予備検討として、過去に京都大学原子炉実験所で実施された加速器駆動未臨界実験を対象として、ランダムサンプリング法に基づいたバイアス因子法、および尤度を利用したベイズ推定手法による双子実験を実施した。また、パルス中性子法により直接測定可能な"面積比"と"即発中性子減衰定数α"を組み合わせてデータ同化することで、実効遅発中性子割合の核データ起因不確かさも低減できる可能性を見出した。 新たな未臨界実験の手法開発として、原子炉物理学分野における一点炉動特性方程式に対する、データ同化法の一種である"粒子フィルタ法"の適用可能性について調査した。仮想的な数値実験により、中性子計数率の時系列データに対して粒子フィルタ法を適用することで、未臨界度の逆推定が可能であることを確認した。加えて、未臨界体系における任意のステップ状の状態(未臨界度、中性子源強度、一点炉動特性パラメータ)変化に対して"積分法"を利用することで、ドル単位未臨界度の概算が可能であることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究では、即発中性子減衰定数αの感度係数評価手法として摂動論に基づいた手法開発に注力し、既存の決定論的手法に基づいた中性子輸送計算コード(例:PARTISN)を用いたαの感度係数評価が実現できる見通しを得ることができた。この成果により、αの測定結果を活用したデータ同化手法については、ランダムサンプリング法に基づいた手法だけでなく、摂動論に基づいた効率的な手法も利用できる見込みである。 また、新たな未臨界実験手法として、粒子フィルタ法や積分法についても仮想数値実験を通じたフィージビリティスタディを実施し妥当性を確認できた。 平成29年度に得られた研究成果を踏まえて、京都大学臨界集合体実験装置や近畿大学原子炉において平成30年度に未臨界実験を実施できるよう、両施設の共同利用実験申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
離散座標法に基づいた中性子輸送計算コードPARTISNを活用して、即発中性子減衰定数αの感度係数評価を実施する。パルス中性子法で直接測定可能な面積比ARについても、摂動論に基づいた感度係数評価手法の開発を試みる。 京都大学臨界集合体実験装置および近畿大学原子炉において未臨界実験を実施し、データ同化手法に用いる測定データの取得、および粒子フィルタ法を適用した未臨界度測定について検討する。 以上の結果を活用して、バイアス因子法あるいは炉定数調整法によるデータ同化を実施し、未臨界実験の結果を活用して、核特性(実効中性子増倍率keff、一点炉動特性パラメータ)の数値計算予測結果に生じる核データ起因のバイアス・不確かさをどの程度低減することが可能か、引き続き検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に得られた研究成果について、論文投稿および国際会議での発表に使用する計画であったが、予定通り執行することができなかった。物品費として、ランダムサンプリング法による並列計算を目的として計算機購入を当初計画していたが、限られた費用内で研究目的を達成することができるよう、摂動論に基づいた効率的な手法の開発に重点的に取り組むよう平成29年度の研究計画を変更した。 平成30年度において論文投稿料、学会参加費、物品購入費として使用する計画である。
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