研究実績の概要 |
原子炉過酷事故対応、核融合物理学、大強度加速器を用いた高エネルギー物理学等、幅広い分野において高温動作、放射線耐性、磁気耐性等の耐環境性に優れる放射線センサへの需要が高まっている。既存のプラナ型ダイヤモンド放射線検出器は耐環境性に優れるが、信号を増幅できないため、測定系全体の耐環境性はシリコンからなる読み出し用のエレクトロニクスにより制限されてしまう。この問題に対し、内部利得を持つダイヤモンド検出器が実現できれば、測定系全体のさらなる耐環境性向上が期待できる。 本研究の目的はダイヤモンドの衝突電離機構を実験的に明らかにし、耐環境性・高内部利得を併せ持つアバランシェダイオード実現のための要素技術を開発することである。期間中に1. 衝突イオン化係数の実験的評価。2. pn接合を利用した電荷増幅機構試作の2つに取り組む。 平成29年度は衝突イオン化係数評価用のpinダイオードの試作に取り組んだ。p, i, n層の気相成長条件を探索し、直径250μmのメサ構造を有するpinダイオードを試作した。作製したダイオードは整流比10桁の良好なダイオード特性を示した。作製したpinダイオードのうち最も良好なものは2MV/cm以上の絶縁破壊強度を持つことが確認された。また、この時のリーク電流はnAオーダーであり、紫外線を用いて衝突イオン化係数評価をする際の励起強度の目途がついた。平成30年度は本年に準備した試料と測定系を用いて室温での衝突イオン化係数測定に取り組む。
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