研究課題/領域番号 |
17K14915
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
金子 政志 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (50781697)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ランタノイドパターン / 密度汎関数法 / 化学結合 / メスバウアー分光 / HSAB則 / 錯体化学 |
研究実績の概要 |
初年度である2017年度は、ランタノイドはもとよりアクチノイドを含む金属錯体の結合状態に主眼を置いて研究を行い、fブロック金属イオンの化学結合評価のための密度汎関数法のベンチマーク研究と、ドナー元素の違いによるfブロック金属錯体の解析に取り組んだ。 まず、fブロック金属イオンの化学結合評価のための密度汎関数法のベンチマーク研究では、これまでに報告されている実験データとして三価ユウロピウムと四価ネプツニウムのメスバウアー分光パラメータを用いて、密度汎関数法による化学結合を行う上で重要な交換相互作用パラメータの最適化を行った。交換相互作用を記述する際に決め手となるハートリー・フォック法による厳密な交換エネルギーと電子密度によって近似した交換エネルギーの混合比をスクリーニングし、実験値に対する再現性を見積もった。その結果、ユウロピウムについては30から40%、ネプツニウムについては約40から60%の厳密な交換エネルギーの混合比が、最も実験値に対する高い再現性を与えることが示唆された。 続いて、fブロック金属イオンとドナー元素の系統的な化学結合を解析するにあたって、三価ユウロピウム・三価アメリシウムとカルコゲン元素の化学結合解析を行った。カルコゲン元素によらず類似の正八面体錯体を形成する配位子を用いて、錯体の安定性及び配位結合の解析を行った。その結果、錯形成による安定化エネルギーは、ともに酸素 > 硫黄 > セレン > テルルとなり、ユウロピウムに対するアメリシウムの選択性は、酸素 < 硫黄 = セレン = テルルとなった。これは、錯形成反応の傾向は、HSAB則におけるfブロックイオンのハード酸の性質を、選択性に関してはアメリシウムイオンのソフト酸の性質を反映していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メスバウアー分光パラメータを用いたベンチマーク研究により、fブロック金属イオンに対する計算手法の選別が概ね終了し、アクチノイドを含めたfブロック元素全体における化学結合の評価手法についても検討が進んだ。その成果についても、国際会議や査読付き論文として出版することができた。また、ランタノイド抽出パターンについての計算についても予備的な計算データが出つつあり、研究全体としては非常に順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、ランタノイド系列で比較した際の計算手法の高精度化を行う必要があり、方策としては水和状態の記述に系列による水和数の変化や硝酸などの陰イオンの配位も考慮したモデルを検討する。その上で、各種ドナー元素を有する抽出剤によるランタノイド抽出パターンの変化について錯形成反応の再現性及び化学結合の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の際に当初の計画よりも安価に調達できたため。次年度助成金と合わせ、消耗品費および旅費として使用する。
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