研究課題/領域番号 |
17K14916
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岩元 大樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究職 (50589744)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子エネルギースペクトル / 核破砕反応 / 核破砕中性子 / 核反応モデル / 中性子検出器 |
研究実績の概要 |
昨年度に大強度陽子加速器施設J-PARCで実施した、3GeV陽子ビームによる水銀標的から180度方向に放出される中性子エネルギースペクトルの測定において、1MeV未満の中性子エネルギースペクトル測定が課題となった。このエネルギー領域の中性子は、高エネルギー陽子加速器、大強度中性子源施設及び加速器駆動核変換システムの遮蔽設計等に極めて大きなインパクトを与えるため、本年度は、当初案を変更し、この領域における中性子エネルギースペクトル測定の実現に向けて、原子力科学研究所の放射線標準施設(FRS)のカリフォルニウム-252核分裂中性子源発生装置及び5MeV単色中性子源発生装置を用いて、中性子検出器(液体有機シンチレータ、低エネルギー中性子検出用のヘリウム-3比例計数管及びボロン入りプラスチックシンチレータ)の中性子検出効率試験及び応答試験を実施した。次年度は、これらの中性子検出器を用いて、昨年度の測定で得られなかった1 MeV未満の中性子エネルギースペクトル測定を、J-PARC/MLFの水銀標的を用いて実施する計画である。 測定と並行して、汎用粒子輸送解析コードPHITSに含まれる核反応モデルの高度化を実施し、核破砕反応から生成される高エネルギー核分裂生成物の収量を精度よく記述するモデルを提案し、従来モデルよりも核破砕生成物断面積の予測精度が大幅に向上することを示した。 実験及びモデルの高度化で得られた成果を、韓国慶州で開催された遮蔽に関する国際専門ワークショップSATIF-14、大阪で開催された日本原子力学会2018年秋の大会及び学術論文誌Journal of Nuclear Science and Technologyで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定では、1 MeV未満(keV領域)の中性子エネルギースペクトルの測定という新たな課題が生じたが、このエネルギー領域の中性子エネルギースペクトルの測定に向けた中性子検出器の校正試験及び応答試験を実施できた。次年度は、本年度に試験を行った中性子検出器を用いて180度方向中性子エネルギースペクトルの測定を実施する予定である。 核破砕反応を記述する蒸発・高エネルギー核分裂モデルの高度化に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画案では様々な入射エネルギーを用いて180度方向中性子エネルギースペクトルを測定し、中性子収量の入射エネルギー依存性を調査する計画であったが、1 MeV未満(keV領域)の中性子エネルギースペクトルの測定という新たな課題が生じた。このエネルギー領域の中性子は、高エネルギー加速器施設の遮蔽において非常に重要であるため、今後は、J-PARC水銀標的から180度方向に放出される1 MeV未満の中性子エネルギースペクトルの測定に重点を置いて測定する計画である。この変更によって入射エネルギー点は少なくなるが、400 MeV中性子を用いた180度方向中性子エネルギースペクトル測定は実施する計画であり、中性子収量のエネルギー依存性の傾向は把握できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも中性子検出器を安く購入できた。 次年度は中性子測定で必要なNIMモジュールを購入予定である。
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