研究課題/領域番号 |
17K14917
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
橋本 慎太郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (60465995)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 粒子輸送計算 / ブートストラップ法 / 系統的不確かさ(系統誤差) / モンテカルロ法 / 核反応モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、粒子輸送計算に組み込まれた核反応モデルの不定性に起因する系統的不確かさ(系統誤差)を評価するにあたって、ブートストラップ法を用いて高速にその評価結果を推定することを目的としている。本年度は、分散分析に基づいた系統的不確かさ評価方法をモンテカルロ法による粒子輸送計算に適用した場合の有効性について検証を行った。分散分析を導入することで、モンテカルロ法における統計的不確かさと系統的不確かさを個別に評価可能となり、ブートストラップ法を適用する理論的枠組みを整備することができた。本成果をJournal of Nuclear Science and Technology誌において論文発表した他、第14回加速器、ターゲット及び照射施設の放射線遮蔽に関する国際専門家会合(SATIF14)において口頭発表を行った。 次に、重イオン・粒子輸送計算コードPHITSにより求めた中性子の遮へい計算結果にブートストラップ法を適用し、得られた推定値の信頼性と使用した初期サンプル数やリサンプリング数の関係を調査した。初期サンプル数を変化させながら系統的不確かさの推定値を求めたところ、その値は多くの計算条件において初期サンプル数に依存しており、少数のサンプル数で信頼性の高い推定値を得ることが難しいことがわかった。これは、粒子輸送計算の特徴として乱数によって稀に平均値から離れた値を示すことがあり、その稀な結果が分散である系統的不確かさに大きな影響を与えることが原因である。次に、推定値の信頼性とリサンプリング数の関係については、リサンプリング数が100程度で10%の精度、1000程度で1%の精度で収束することがわかった。よって、要求する信頼性の精度に応じてリサンプリング数を調整し、計算量を最小限に抑えることが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、ブートストラップ法を適用した際の初期サンプル数とリサンプリング数を変数として、得られる推定値の信頼性との関係を定量的に求めデータベース化する予定であった。しかし、初期サンプル数に関して、輸送計算の多くの条件で推定値が強くサンプル数に依存することがわかり、単純に分散の推定値だけでは信頼性を評価できないことがわかった。そこで、今後はブートストラップ信頼区間を推定値の信頼性を確認する指標とすることで、初期サンプル数と推定結果の信頼性の関係をデータベース化する。一方のリサンプリング数に関しては、推定値の収束性を定量的に求めることができた。これまでに行った中性子の遮へい計算に関して、リサンプリング数が100程度で10%の精度、1000程度で1%の精度で収束することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き初期サンプル数と推定値の信頼性の関係をブートストラップ信頼区間という指標により明らかにし、その結果をデータベースとして作成する。その成果とリサンプリング数に関するデータベースを組み込んだ評価機能を開発し、PHITSに導入すると共に中性子の遮へい計算における有効性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定の国際会議を変更し、研究成果を公開するにあたってより効果的な分野の会議に参加したところ、旅費が予定より少なく済んだ。次年度に開催される国内外の会議や研究会に参加するために計上する。
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