研究課題/領域番号 |
17K14929
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松崎 泰教 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50738200)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マーモセット / 非ヒト霊長類 / アデノ随伴ウイルスベクター / レンチウイルスベクター / AAV-PHP.B |
研究実績の概要 |
平成29年度はマーモセットへ超効率血管脳移行AAVベクター(AAV-PHP.B)を静脈内投与し、脳内での発現をプロファイリングすることを目的とした。AAV-PHP.Bをマーモセット静脈内投与するだけで全脳的もしくは特定の細胞種特異的に遺伝子発現させることが可能となれば、遺伝子組換え動物の作出の代替技術となる可能があり、効率的な研究推進技術となることが期待される。そこで、強力なconstitutiveプロモーターであるCBhプロモーターでEGFPを発現するAAV-PHP.BもしくはAAV9ベクター(ネガティブコントロール)をマーモセット大腿静脈内へ5×10^13 vg/kgの力価で投与した。マーモセットはそれぞれ若齢メス(1.6歳齢)および高齢オス(7.2歳齢)を2頭ずつ用い、性別や年齢によって発現に変化が生じる可能性があるか検討した。結果として、AAV-PHP.BはAAV9ベクターと比較して中枢神経系での発現率に変化はなく非常に低率であることが分かった。神経細胞やグリア細胞への細胞種における発現率にも変化は無かった。神経系での唯一の違いは、AAV-PHP.Bは末梢神経系の後根神経節(DRG)の神経細胞へ高効率に発現できるということであった。まとめると、AAV-PHP.Bのマーモセットへの静脈内投与ではマウスのようにBBBを超効率に突破できず、遺伝子組換え動物のような高発現は得られないことが分かった。 この結果を踏まえ、AAV-PHP.Bを作製したCREATE法を参考に、マーモセットのBBBを超効率で突破する新たな超効率血管脳移行AAVベクターの開発を行った。平成29年度中に開発できなかったため、平成30年度も引き続き開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画にあったように、CBhプロモーターで発現するEGFPを載せたAAV-PHP.Bをマーモセットの大腿静脈に投与し、そのプロファイルを解析した。コントロールにAAV9ベクターを用いたところ、中枢神経系(脳・脊髄)での発現効率に違いは観察出来ず、大脳、海馬、小脳の神経細胞およびアストロサイトにおいて3%未満の感染・発現率しか観察できなかった。ただし、AAV-PHP.Bでは脊髄および延髄の上行性神経線維に強いEGFP発現が観察できた。末梢神経系のDRGニューロン由来の繊維であり、DRGを観察したところ神経細胞での強いEGFP発現が観察できた。これらの結果を論文として昨年度中にまとめ、出版された(Matsuzaki Y., et al. Neurosci Lett. 2018)。しかしながら、当初の計画にあったような細胞種特異的プロモーターのプロファイリングを行うことは不可能であったため、当初の計画を後回しにして、マーモセットのBBBを超効率で突破するAAV-PHP.Mの開発を優先させた。方法はAAV9ベクターからAAV-PHP.Bを開発したCREATE法を踏襲した方法で2度試したが、未だにマーモセットBBBを高効率に突破するAAVベクターは得られていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に記載した平成30年度の予定は、AAV-PHP.Bを用いたマーモセットの小脳mGluR1をターゲットとしたCRISPR/Cas9システムでのin vivoノックアウトである。ただし、AAV-PHP.Bを当初の予定通りにマーモセットへ使用するわけにはいかなくなったため、CREATE法を用いたAAV-PHP.Mの開発を引き続き行う予定である。 それと平行し、AAV-PHP.Mの開発成功に備えて、予定通りにCRISPR/Cas9システムの開発をin vitroで進める。まずマーモセットmGluR1をターゲットにしたgRNAを設計し、検定をしなければならないが、それにはマーモセットの細胞を用いる必要があるため。このため、比較的簡単に単離可能な初代培養線維芽細胞かHEK293T細胞へレンチウイルスベクターを用いてマーモセット由来mGluR1 cDNAをゲノムDNAへ挿入させることで、SaCas9用gRNAのセレクションを行う。 AAV-PHP.Mを作り出すことが出来れば、計画通り、上記でセレクションしたgRNAおよびSaCas9、3G Tetシステムを用いることでマーモセットmGluR1のin vivoノックアウトを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度には予定していた、AAV-PHP.Bを用いた細胞種特異的プロモーターの発現プロファイリングを行わなかったため、翌年度のCRISPR/Cas9やマーモセット関連研究費用に繰り越した。
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