・マーモセットのBBBを超効率で突破するAAVベクター作出のため、Devermanらが開発したCREATE法を用いてAAVカプシドへランダムな7アミノ酸配列をQ588-A589の間に挿入した2017年度の実験では目的とする新規AAVベクターが得られなかったため、長さを変更したライブラリーを作製し、マーモセットへインジェクションすることでスクリーニングを行った。また、別のカプシド表面部位であり変異挿入候補部位である場所へのアミノ酸にランダム変異を加えたライブラリーのスクリーニングも行った。しかし、2018年度までにこれらの方法では、AAV9以上の効率でマーモセットBBBを突破するAAVベクターは得られなかった。 ・AAV-PHP.BとCRISPR-Cas9システムを組み合わせたノックアウト(KO)を試みた。マウスでのGrm1遺伝子をターゲットとした。AAVのパッケージングリミットの問題からsplit-Cas9システムを採用したことで、2種類のAAV-PHP.Bをマウスへ静脈投与した。2重感染が生じればKOされることが期待できる。さらに効率を上げるため、gRNAは3箇所をターゲットとしたgRNAを同時に発現するtriple-CRISPRシステムを用いた。Grm1は小脳に特に強く発現しており、KOによって運動学習が障害されることが予想されるため、ロータロッドテストによって運動学習の測定を行った。結果、運動学習に障害は観られなかった。サクリファイスし、小脳を免疫染色して脳内での発現を調べた結果、Cas9タンパク質は発現していたためAAV-PHP.Bとsplit-Cas9システムは正常に働いていたが、Grm1の発現低下は生じていなかったことが分かった。原因としてtriple-CRISPR用ソフトを使って設計したが、gRNAの認識が不十分な可能性が考えられた。
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