研究課題
恐怖記憶が想起されると、通常恐怖反応を伴うが、ある一定条件下に置かれると、この恐怖反応が抑えられる「恐怖記憶消去」と呼ばれる現象が誘導されることが知られている。この現象は、恐怖反応を誘発する恐怖回路から、恐怖反応を抑制する消去回路へ転移したことによって生じるものであると考えられるが、その実態については不明である。本研究は、恐怖反応を誘発する恐怖回路から、抑制する消去回路への転移機構を記憶痕跡の観点から明らかにことを目的としている。具体的には、所属研究室にて新規に作成した遺伝子改変動物(Arc promoter - FlpoERマウス)を用いた、記憶痕跡細胞の標識・可視化・操作手法を駆使し、転移機構の実態解明を目指している。本年度は、(1)同マウスを用いて、恐怖回路から消去回路への転移起点となっている可能性のある脳領域の探索を、恐怖記憶形成時活性化細胞・消去時活性化細胞のの同一性・相違性を指標に免疫染色法を用いて解析した。その結果、海馬領域が転移起点となっている候補の一つである可能性が示唆された。(2)自由行動下でのマウス脳内における記憶痕跡細胞の活動様式をモニタリングするため、微小顕微鏡を用いたカルシウムイメージング手法のセットアップを進めた。(3)光遺伝学を用いた記憶痕跡細胞活動の抑制操作においては、技術的検討を行い、最も抑制効果の高いトランスポーター, チャネルやウイルスタイターなどを明らかにした。また、狂犬病ウイルスを用いた記憶痕跡に関する可塑的神経回路群操作のためのアデノ随伴ウイルスを作成し、逆行性トレーシングを可能とするプロトコールを樹立した。
2: おおむね順調に進展している
恐怖回路から消去回路への転換の起点となる可能性のある脳領域を見出したため。
研究計画に従い実験を遂行する。
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Nature Comminications
巻: 8 ページ: 15977~15977
10.1038/ncomms15977