研究課題/領域番号 |
17K14931
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松井 鉄平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10725948)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 神経科学 / 視覚 / 軸索 / トップダウン結合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、マーモセットにおいて、「高次視覚皮質から一次視覚皮質(V1)」及び「高次視床からV1」へのトップダウン結合が、それぞれどのような視覚反応特性を持つV1 神経細胞に入力しているか解明することである。霊長類では、高次皮質および高次視床からのトップダウン結合が異なる機能を持ち、その違いは、二種類の結合がV1 に対して異なる仕方で視覚情報を送ることに起因すると推測されている。本研究では、二光子および内因性シグナルのイメージングを組み合わせて、軸索末端で見たトップダウン結合の視覚反応特性と、それが分布する機能カラムの視覚反応特性を比較する。これにより、入力側と受け手側の視覚反応特性の対応関係が皮質-皮質間と視床-皮質間のトップダウン結合で異なるか否か明らかにする。初年度は本研究に必要な実験技術の最適化、及び皮質-皮質間トップダウン結合の解析を行った。先ず、マーモセットのV1 および(複数ある)高次視覚皮質を広域カルシウムイメージングによってマッピングした。特に方位選択性に対する反応を見ることで初期視覚野を同定することに成功した。次に、二次視覚野において二光子カルシウムイメージングを行い、高次視覚野からの軸索末端のカルシウム応答が観察できることを確かめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初の計画以上に進展している。 当初の計画では初年度は予備的な技術を開発することが主目的になる予定であったが、実際には必要な技術の開発に成功し、さらに高次視覚野から二次視覚野の特定の機能カラムへのトップダウン結合の機能解析を世界で初めて行うことに成功した。 また、当初の計画では内因性シグナルイメージングとの組み合わせを予定していたが、その後の工夫で全てをカルシウムイメージングで行うことに成功し、実験の大幅な簡略化と成功確率の改善に繋がった。 また、ここで開発した広域カルシウムイメージングを用いることにより、既に、マカクサルにおける内因性シグナルイメージングでは見えなかった現象や機能を多数明らかにしている。これらの成果は本研究の副産物であり、更に大きな研究へと広がるきっかけになるものである。 これらの理由から、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
マーモセットではMT野が側頭筋の下の頭蓋にあるため、技術開発の段階ではリスクを考えてアクセスすることをしなかった。しかしながら技術開発はほぼ終了したので、手術におけるリスクを考慮しても十分な成功率がみこめる。今後はMT野において当初予定していた実験を行う予定である。 また、本研究の副産物として出て来た広域カルシウムイメージングにより、新しい現象が多数見えているので、こちらについても研究を推進していきたいと考えている。MT野での実験を行う際には広域カルシウムイメージングのデータも取得することになる。当初の計画ではたんにMT野の位置を見つけるだけが目的であったが、より有益な知見が得られると期待できるので、少し計画を変更して広域イメージングのデータ解析にも時間を割く予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初予定していたより技術開発の進展がスムーズであり、物品費が思っていた以上にかからなかった。 また、結果が思ったより早く得られたため、得られた成果を学会発表などで報告する必要があった。このため実験を行う回数が当初計画していたよりも少し少なかった。 来年度は、開発した技術を用いた実験を重点的に行うため、今年度使用できなかった助成金を含めて申請した金額を使い切る予定である。
|