研究課題
本研究はマウスで開発が進んでいる最新の光学的神経活動観察法をマーモセットに適用することで、これまで調べることが出来なかった神経機能を解析する研究である。したがって、本研究の重要な要素、また最も困難な部分は技術的なものである。本研究の技術的目標のうち重要な要素は3つある。そのうち一つはミクロレベルでの機能解析を可能にするためにマーモセット神経細胞にGCaMPを発現させ、神経活動を観察する実験系を構築することである。当初マウスで行われているのと同様の手法をそのままマーモセットに適用していたが、これはうまくいかなかった。現在では、Thy1とttAプロモーターの組み合わせによりマーモセットV1で良好なGCaMP6の発現が得られることを確認している。2つ目の技術的目標は、高次視覚野、特にMT野、の機能解析を行う実験系を構築することである。これについては、まず実験が容易なV1で実験系を確立し、次にMT野での実験を行った。MT野の方向選択性カラムの発見は、マカクサルを中心とした霊長類での先行研究とも一致しており、信頼性が高い結果と考えられる。本研究の3番目の技術的目標として、マーモセットにおいて神経軸索末端での機能解析を行うということがある。まずは比較的近距離である三次視覚野DMから二次視覚野V2へのフィードバック結合の機能解析を行った。DMからV2へのフィードバック結合は大脳皮質1層に分布しており、V2の細胞体とは異なる刺激選択性を示していた。このように、2年間の研究期間で3つの技術目標を達成した。今後は、マーモセットが入手できしだい、予定していたMT野、PulvinarからV1への結合の機能解析を行う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究はマウスで開発された最新の光学的研究手法を霊長類のマーモセットに応用する研究である。マウスからマーモセットへの応用過程では、霊長類特有の困難が多数あったが、2年間という短い研究期間にも関わらず本研究では必要な技術開発を全て達成することが出来た。これらの技術目標は、今までマウス以外の動物ではほとんど適用されたことが無い技術であり、また、マーモセットにおいては初めて適用された技術であることを考えると、2年間で達成した成果としては大きく、また当初は予想していなかった霊長類特有の困難を考えると、当初の計画以上の進展があったと考える。本研究ではさらに、開発した手法を単純に組み合わせることによりトップダウン信号の分布パターンを調べることは可能であったが、これについては日本国内でのマーモセットの入手困難により、研究期間内にこれをおさめることが出来なかった。今後は、マーモセットが入手できしだい、予定していたMT野、PulvinarからV1への結合の機能解析を行う予定である。
本研究ではさらに、開発した手法を単純に組み合わせることによりトップダウン信号の分布パターンを調べることは可能であったが、これについては日本国内でのマーモセットの入手困難により、研究期間内にこれをおさめることが出来なかった。今後は、マーモセットが入手できしだい、予定していたMT野、PulvinarからV1への結合の機能解析を行う予定である。
本研究では、開発した手法を単純に組み合わせることによりトップダウン信号の分布パターンを調べることは可能であったが、日本国内でのマーモセットの入手困難により、研究期間内にこれを達成することは難しかった。今後は、マーモセットが入手できしだい、マーモセットを購入し、予定していた実験を行う計画である。次年度使用額は全てマーモセットの購入代金にあてる予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件)
Cell Reports
巻: 26 ページ: 1082~1088.e3
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2019.01.008
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 505 ページ: 1216~1222
https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2018.10.027
Communicative & Integrative Biology
巻: 11 ページ: e1528821
https://doi.org/10.1080/19420889.2018.1528821
Cerebral Cortex
巻: 29 ページ: 1496~1508
https://doi.org/10.1093/cercor/bhy045