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2017 年度 実施状況報告書

筋シナジーを調節する脳内メカニズムの解明~運動神経を良くする手法の開発に向けて~

研究課題

研究課題/領域番号 17K14933
研究機関東京工業大学

研究代表者

神原 裕行  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (50451993)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード運動学習 / 筋シナジー
研究実績の概要

本研究の目的は、脳が状況に応じて筋シナジーをどのように調節しているのかを、計算論的に明らかにすることである。
特に、筋活動パターンの基底をなす筋シナジーは、強化学習と呼ばれる試行錯誤的な学習を通じて獲得されると言う仮設を設け、その仮設を検証するための計算機シミュレーション、および、計測実験を行う。
平成29年度はまず、Bergerら(2013)の先行研究で用いられた仮想手術タスクと呼ばれる、筋シナジーやそれらの活動強度の適応過程を観測する計測実験のシステムを構築した。具体的には、腕の筋電信号から手先に発生している2次元の力を推定する筋骨格モデルを構築するプログラム、および、推定した手先力によって画面上のカーソルが移動する等尺性筋収縮タスクを行うための実験システムを開発した。また、筋シナジーを変化させない限り2次元上に配置された手先力の目標値を実現できないようにするために、各筋肉の活動とそれによって発生する手先力の関係を再決定するプログラムの開発を行い、Bergerら(2013)と同様の仮想手術タスクが行える環境を整備した。
また、強化学習アルゴリズムを用いて筋シナジーを調節するとともに、腕の筋骨格系のダイナミクスの内部順モデルを学習し、その順モデルを用いて筋シナジーの活動強度を勾配法によって学習する計算論的な運動学習モデルを構築し、Bergerら(2013)と同様な仮想手術タスクに適用した計算機シミュレーションを実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度の目標である、仮装手術タスクを実施するための実験システムの開発、および、筋シナジーを獲得する強化学習を基にした運動学習モデルの構築を行なった。
構築した実験システムを用いて、仮装手術タスクに関する予備実験を行なった結果、Bergerら(2013)と同様の結果を再現できることが確認できた(本研究の課題1)。
また、運動学習モデルを用いた計算機シミュレーションを行った結果、d’Avellaら(2012)が仮定した筋シナジーと活動強度の学習係数の違いを設けなくても、Bergerら(2013)の実験結果が再現できることを確認した。さらに、手先力が一方向にしか発生しないように筋骨格パラメータを変換する場合でも、その変換の仕方によって学習の速度が異なることがシミュレーションによって確認できた。具体的には、各筋肉の活動が手先力に影響するパラメータを元のパラメータに出来る限り近くした方が、適切な筋シナジーをより早く獲得できることが確認できた。

以上のように、研究計画で示した29年度の達成目標に対して、現在のところ良好に研究が概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

平成30年度では、これまでに構築した仮装手術タスクの実験システムを用いて、筋シナジーを短時間で調節することができる運動課題を特定する(本研究の課題2)。さらに、強化学習でしか筋シナジーを適切に 調節できない環境で運動課題を行う計測実験を行い、本研究の仮説を検証する(本研究の課題3)。
これまでに行ったシミュレーションによって、各筋肉の活動が手先力に影響するパラメータを元のパラメータに出来る限り近くした方が筋シナジーの獲得がより早くできることが示唆されている。そこで、課題2では、仮装手術タスクの実験システムを用いて、計測実験でもこのことが観測できるかを検証する。
さらに、課題3では、適切な筋シナジーの獲得が、強化学習では行えるが、誤差勾配法ではできないように、提示する視覚情報を変更し、筋シナジーの獲得が強化学習を基にした学習アルゴリズムで行われているのかを検証する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Decoding of finger movement in humans using synergy of EEG cortical current signals2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshimura N., Tsuda H., Kawase T., Kambara H., and Koike Y.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: 1-11

    • DOI

      10.1038

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Motor learning model adapting to velocity force-field reaching task2017

    • 著者名/発表者名
      H. Kambara, H. Shimizu, A. Takagi, T. Kawase, N. Yoshimura, Y. Koike
    • 学会等名
      第27回日本神経回路学会全国大会
  • [学会発表] Relationship between muscle synergies and physical performance in patients with hemiparesis2017

    • 著者名/発表者名
      Toshihiro Kawase, A. Nishimura, A. Nishimoto, F. Liu, Yeong Dae Kim, Hiroyuki Kambara, Natsue Yoshimura, Yasuharu Koike
    • 学会等名
      Neuroscience 2017

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公開日: 2018-12-17  

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